小型冷凍庫 (AQUA AQF-SF10K) の消費電力の測定結果
◆まえがき
冷凍食品を買うことが多くなったので保存用に小型の冷凍庫を買いました。機種はAQUAのAQF-SF10という102リットルの物。幅が狭いので置き場所を取らないのが気に入りました。
うちで買った家電製品は消費電力を測定する習わしなので、以前作った消費電力ロガーを引っ張り出してきて測定してみました。
◆冷凍庫
・外観
ファン式で幅が狭く縦長の冷凍庫です。
・配線系統図
背面に貼られていた回路図です。
◆測定
自作の電力ロガーを使って消費電力を記録しました。
・測定器
これ以外にデーターの記録用にノートPCを使っています。
◆測定結果
1)電源投入からの消費電力変化
冷凍庫に電源を入れて、10時間後までの消費電力の変化です。
1時間後に75Wまで上昇しその後65Wくらいに減って落ち着いてます。
3時間後くらいから断続運転が始まり、徐々に通電される時間が短くなっていって安定状態になって行きます。なお、2.1~3.2Hrの期間はPCがダウンしていて記録が取れていませんでした。この間にたぶん1-2回はパワーオフの期間があったのではないかと思います。
2)定常状態の消費電力
約2日間の消費電力の変化です。
断続運転を繰り返していて、平均すると消費電力は約28Wでした。
高いピークはコンプレッサーの起動電流だと思いますが、10秒間隔のサンプリングに引っ掛かった時だけ高い値が記録されているのだと思います。(回路図のPTCサーミスタが動作して起動トルクを稼いでいる?)
グラフの終わりのあたりで消費電力が増えていますが、これは霜取り運転をしているのだと思いますが、次項で詳しく見て行きます。
3)霜取り中の消費電力
20分間くらい125Wに上がっているのがエバポレーターの霜取りを行っている期間だと思います。霜取りの後は温度を回復させるためにコンプレッサーが連続運転されています。
なお霜取り運転の間隔は、回路図に書かれている情報では60時間から10時間となっていますが、どのような方法で制御しているのかは判りません。
◆消費電力と力率の話
以上の測定結果のように、消費電力はコンプレッサーの運転時は約65W、霜取りヒーターの消費電力は約125Wでした。定常運転時はコンプレッサーは断続運転になるので平均消費電力は約28Wでした。
以下は電気工学を学んだ方でないとちょっと難しいかもしれないので、読み飛ばして頂いてかまいません。
気になったのがコンプレッサー運転時の力率が50%くらいしか無いことです。65Wで力率が50%と言うことは、電圧と電流の位相が60度もずれていることになります。この時の皮相電力は130VA で無効電力が113var もあり、褒められた値ではありません。なお、霜取り運転中の力率は100%になっていることを確認しています。
力率が悪くても電気代には影響ないのですが、情報機器などは力率を一生懸命改善してるのに対し、この値はちょと残念な気がします。ただ、コンデンサモーターの位相は進みで、波形歪みも無いので問題にならないのかも?
ともかく、このように力率が悪い機器の消費電力を測定する場合は、有効電力を正しく測定出来る電力計を使う必要があります。簡易的な電力計は、電流だけ測って力率を100%と仮定した値を表示したりするので要注意です。そういう電力計でこの冷凍庫の消費電力を測定すると、実際より2倍も多い値を表示してしまいます。
◆まとめ
この冷凍庫の平均的な消費電力は28Wと言うことが判りました。この値をどう思うかは人によって違うと思いますが、個人的にはもう少し省エネであって欲しかったです。
ちなみに、うちのメインの555リットルの冷蔵庫の平均消費電力は47.3Wですが、これと比べるとサイズの割には消費電力が大きいと思います。もちろん値段や運転温度が違いますが、他の要素としてこの冷凍庫は薄型なので容積に対して表面積が大きいのが不利になっているのかも知れません。
追記
情報機器の力率規制の理由は、直接整流に伴う電流波形の悪化だったと思うので、冷凍用コンプレッサーの力率の話と同列に扱うことは出来ないことに後になって気付きました。
この冷凍庫のJISの2015年測定法による年間消費電力は 356kW/年と表示されていますが、これを平均消費電力に換算すると40.64Wになります。今回の測定での消費電力は28Wだったのでかなりの差があります。たぶん周囲の温度や扉の開閉回数によってこの値は悪化(増加)すると見たほうが良さそうです。