SMD部品のマーキングから型番を特定する -2
◆まえがき
前回の記事に引き続きSMD部品のマーキングから型番を特定してみます。
◆今回の対象部品
下記の3種です。
マーキングとパッケージは、左から22H (SOT-23, 0.95mmピッチ)、YB(SOT-523, 0.5mmピッチ)、36 86 (SOT-89, 1.5mmピッチ)です。
以下順番に調べた結果です。
◆22H
・検索
Marking SMDのサイトで22を調べると、SOT-23パッケージだとUTCの22Vのツェナーダイオードが該当します。しかし22Hというマーキングはヒットしません。
Googleの画像検索結果を見るとShanzhen ERIC のMA3220-Hというのがフォントの雰囲気が同じです。
そこでGoogleでこの型番とdatasheetを検索すると、出てきました。Panasonicの22.7Vのツェナーダイオードのようです。
データーシートはこちら
・確認
CVCCな安定化電源を使い、仕様書に記載のピン間でツェナー電圧を確認しました。ということでこの部品の判定結果は間違い無さそうです。
◆YB
・検索と測定
あちこち検索した結果と、現物のピン間抵抗を測定して出した答えは、東芝のPNPのデジトラのRN2102Fです。なお、あちこち探したので正確な途中経過は判らなくなってしまいました。
このデーターシートのR1=10kΩ, R2=10kΩの物みたいです。現物のEB間を逆電圧で抵抗測定すると20kΩ程度でした。
・確認
テスト回路を作って動作確認し、想定したデーターシート通りに動くことを確認しました。
◆36 86
・検索と測定
外観はパワー系の半導体ぽいのですが、ピン間の抵抗を測ると単純なトランジスタやFETでは無さそうです。
シリーズレギュレーターである可能性を考え、ピン間に電圧を掛けて残りのピンの電圧変化を見ましたが単純なシリーズレギュレーターではありませんでした。ただ、電圧が1.25V付近で引っかかる挙動があったのでシャントレギュレーターかとも思ったのですが、1.25Vの状態で外部に流せる電流が僅かだったので、これも違う気がしました。
ネットをいろいろ検索すると、Googleの検索結果の画像に似た雰囲気の写真を発見。
どうもAliExpressの販売ページの写真みたいです。記載されているM5236という型番のデーターシートを検索で発見。
(SOT-89のパッケージのピン番号がBottom Viewで書かれていて、凄い違和感あります)
内容としてはシリーズレギュレーターの制御回路だけ抜き出したデバイスで、実際に動かすにはPNPのパストランジスタを追加する必要があります。そんな面倒なことをやるくらいならLM317を使った方が楽になりますが、このデバイス(M5236)を使うと最小電圧ドロップが0.2Vで済むというメリットがあります。
ちなみに、このデバイスの入力基準電圧は1.26Vですが、電圧の印加テストで1.25Vを境に動作が不連続になる現象が認められたのはこういう仕様が関係していた可能性が高そうです。
このチップを動かすためには20mAの電流を流す必要がありますが、もし入力電圧が35Vなら0.7Wの損失になります。そんな事情から放熱を考慮したパッケージを使っているのだと思います。
・動作確認
ブレッドボードで動かせるようにピンヘッダを付けて
Standard application circuit で動作確認して問題無く動くことを確認しました。このデバイスはM5236と考えて間違い無さそうです。
◆参考
この調査ではデバイスのマーキングをキーに検索を行いました。出て来たのは以下のようなWebです。
これ以外にiPhoneのアプリもあるらしいですが有料みたい。
最初のが有名ですが、残念なことに日本のデバイスはあまり掲載されていない気がします。日本のメーカーのマーキングコード一覧表があると嬉しいです。
東芝のだけでも役立つと思います。と言うか東芝のマーキングを集めたサイトも確かあったのですが、見失ってしまいました。(東芝の内部資料としては存在しているはずですが公開されて無いですよね?)
AliExpressなどの物販サイトでマーキングコードを検索すると写真が出て来るので、それを見て判断するのも良さそうです。なお、Googleの検索結果の画像も参考になります。
前の記事に書きましたが chatGPT はまだ戦力にならなかったです(現時点の話)
◆マーキングに関する情報サイト(本項追記)
https://note.com/tomorrow56/n/n1d898b7f9f87 (ThousanDIY)
◆まとめ
素性が判明した3種類の部品は小さな袋に入れて部品箱に戻しました。
こういう調査は電子回路の知識の腕試しと言う感じで、やってみるとなかなか面白いです。
ここに書いた検索方法は記事の執筆時点(2023年4月}のもので今後様子が変わってくる可能性はあります。