google-site-verification: google3bd66dd162ef54c7.html
fc2ブログ

セルシンの受信機を作ってみるも失敗

◆まえがき
DCブラシモーターの回転子を使ってかご型誘導モーターの原理説明モデルを作ったのですが、その時に作った3相のフルブリッジの駆動回路でもう少し遊んでみることにします。と言うか実はこっちを最初に始めてたりします。

◆セルシン
セルシン レゾルバとも呼ばれていて、現在のように電子回路が発達していなかった時代に回転角度を遠方に伝達するために使われた仕掛けです。
・原理図
セルシンの原理図 図はMSTのWebより転載

図のよう固定された二次巻き線に発生する電圧(と位相)を送り、受信機側で角度として再現させる仕掛けです。

本来は図のように交流で動かす物ですが、受信側だけなら、直流で回転磁界の角度を再現させることで指針は永久磁石でも動くはずです。さらに、回転子と固定子を入れ替えると、模型のブラシモーターの構造とほぼ同じになるので簡単に実験することが出来そうです。

◆セルシン受信機
DCブラシモーター
DVDのドライブのトレイの駆動モーターだったと思いますが、構造はDCブラシモーターです。このシャフト(プーリー)を固定して使います。つまりモーターの外側を回転させます。

DCモーターの回転子から配線
コイルに配線を接続して通電できるようにします。なお、整流子は使いません。

◆駆動回路
回路図
3相フルブリッジの駆動回路で、3相かご型モーターの実験を行った時と全く同じ回路です。

◆ソフト
// DVDスピンドルの3相アナログ駆動テスト
// 20221230_3PhaseSteppingMoter

#define MAG_POW 70 // 励磁パワー (0-120の値で指定)

void setup() {
  Serial.begin(115200);
  angle(0, 5000);
  delay(1000);
}

void loop() {
//  Serial.println(millis());
  for (int a = 0; a < 360 * 2; a += 1) {
    angle(a, 400);        // 角度a に移動して指定時間待機
  }
  delay(1000);
  for (int a = 360 * 2; a > 0; a -= 1) {
    angle(a, 400);
  }
  delay(1000);
}

void angle(int a, int tt) {                     // 指定された位相でコイルを駆動.位相は度の値で指定
  int r, s, t;
  float pow_r, pow_s, pow_t;
  pow_r = cos(PI * a / 180.0);          // 駆動位相をラジアンに変換
  pow_s = cos(PI * (a + 120 ) / 180.0); // +120度
  pow_t = cos(PI * (a - 120 ) / 180.0); // -120度
  r = (pow_r * MAG_POW) + 125;            // 振幅125±120でスイング(255近傍は怪しいので避ける)
  s = (pow_s * MAG_POW) + 125;
  t = (pow_t * MAG_POW) + 125;
  analogWrite( 9, r);                   // アナログ(PWM)出力
  analogWrite(10, s);
  analogWrite(11, t);
  delayMicroseconds(tt);
  Serial.print(r); Serial.print(", "); Serial.print(s); Serial.print(", "); Serial.println(t);
}
かご型モーターの原理説明モデルではON/OFF制御でしたが、今回は連続的に変化する電圧で駆動する必要があるので三角関数で値を求めPWMによるアナログ制御を行っています。なお、角度で1度刻みの値で出力しています。

PWMの振幅は125を中央値とした値で設定しており、その最大振幅は MAG_POW の値で指定出来るようにしています。なお、255までフルスイングさせていないのは、応答が不連続になるという噂を聞いたためです。

◆出力波形
駆動波形
三相波形です。

◆動作結果
既にツイッターに動画を書き込んでいるのでそっちを見て頂いた方が手っ取り早いです。

1回転の中で3箇所くらい引っかかる角度があって滑らかに回っていません。これでは細かい角度の伝達には使えそうもありません。回転回数を伝えるだけならこれでもOKですが、それだったらこんなややこしいことしなくても、簡単な方法がいっぱいあります。

◆考察
滑らかに回転しないのは磁界の分布に原因がありそうです。外側の永久磁石はその中央付近で磁束密度が高くなっていて欲しいのですが、実際には平坦な磁界分布になっていると思われます。また、中の固定子の先端は平坦(というか円周面}になっているので、その範囲内の磁界の強さはほぼ一定になっていると考えられます。

これらのことから、相互の磁界が平坦な部分が対向する領域では引き込みトルクが小さくなってしまい、回転ムラが発生すると考えて良さそうです。つまり、最初から無理のある試みだったということになります。

私は本物のセルシンを見たことが無いのですが、たぶんその固定子の巻き線は、誘導モーターの界磁コイルのように亀甲型のコイルを順次ずらして巻いてあって、つまり重ね巻きになっていて、磁界分布が正弦波になるような構造になっているのだと思います。

以上、もう一度まとめると、この構造では本物のセルシンのような滑らかな角度の表現は出来ません。とは言っても誤差は30度も無く、累積もしないので用途によっては使える局面があるかも知れません。
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

本年も楽しみにさせていただきます

あけましておめでとうございます。
ツィッターで「セルシン受信機が作れないか」って読んだ時、全く知らない用語だったんで検索してみたりしました。かなり精緻な仕掛けなんですね。今回のブログは冒頭に解説があって助かりました。

拝見してみて、回転ムラは、「高速で連続回転する」モーターを、「低速で任意の角度まで回す」仕組みに使った結果だったかと思いました。直流モーターの回転子は、そこそこの重量があって、同じ方向に回し続けるなら慣性で一定の速度で安定回転しますが、その駆動そのものは、「強い力で何度も引っぱたく」ような感じじゃないかと思います。つまり、発生する駆動力(抵抗力も)の山と谷を慣性で均して回ってると。
(規格より低い電力しか与えないと途切れ途切れのムラ回転になりそう)

電圧計など軽いコイルのみ回す装置だと、90゚くらいは滑らかに周りそうですが、これじゃ役に立たないわけですね。ただ、原理図を見ると、指針は90゚ほどだし、1次巻線に与えた単相ACが、送信側の挙動により2次巻線の3本リードにどういう位相を発生させるのかというキモの部分がまだ理解できてなく、野次馬でしかありません。

なお、装置の目的を聞いて真っ先に指向性ある無線アンテナを駆動するローテータ(の指針)を思いだしました。前に故障品の修理で回路図を見たら、駆動軸の直下にVRを抱かせて、回転角を電圧に変換し、表示部では指針の直下に抱かせたVRが同じ電圧を出すまで指針駆動モータを回す、というほほえましい仕組みでした。緩慢な動きを緩い追随性で追うだけなんで、これで十分なんでしょうね。なお、表示部を電圧計にした機種もありますが、360゚を90゚に圧縮して読むことになり、直感に訴えにくいのが難点です。

好奇心(かもしれない)がもたらす新しい発想と、それを手近な材料で試みる記事、毎回勉強になります。本年もよろしくお願いします。

re:本年も楽しみにさせていただきます

今年もよろしくお願い致します。
こういう実験をやると小型のモーターが効率が悪い理由の一端が判った気がします。
関連の記事はあと2つくらい続く予定なので、よろしければお楽しみ下さい。

セルシンの記事拝見しました。

こんにちは。動画楽しく拝見しました。確かに3極のギャップ部分でひっかかる感じですね。リラクタンスの差が大きいのでしょうか。
手持ちの資料にある解説用の図では、固定子の巻線は4スロット対面で3相24スロットのおっしゃるとおり重ね巻きと思われます。いわゆるオートシンのタイプでは精度は1度から3度くらいだそうです。
固定子と回転子を入れ替える発想は面白かったです。
楽しい記事ありがとうございました。

re:セルシンの記事拝見しました。

アビオンさん、いろいろ情報ありがとうございます。
通電しないでモーターのシャフトを指で回すとコギングトルクを感じるので、そういう状態ではダメ、ということなんでしょうね。
オートシンという言葉を知らなかったのですが、調べてみたら同じような物なんですね。あと、アビオンというお名前はアビオニクスに由来するのでしょうか、お詳しそうですね。

セルシン

HP久しぶり覗かせていただきました。セルシン記事面白く見せていただきました。十数年前まで飛行機の電気整備していました。セルシン現在でも(十数年前までは確実ですが)旅客機に限らず軍用機に 使用しているはずです。操縦桿、スロットルレバー、各動翼等に使い角度情報を得ています。単相交流で 3相(回転相ではない)の電圧比(同相)で正確に位置情報が得られるためです。(ベクトル電圧情報) モーター直流電圧比制御すれば セルシンとして使用できるかも?かと思います。 外野から 楽しませていただきました。
勝手なことで失礼しました。

re:セルシン

飛行機の舵面の角度伝達などにもセルシンが使われるのですね。航空機用の計器ともなるとすごく精密で軽くかつ頑丈に作られているんでしょうね。難だか憧れちゃいます。
カレンダー
05 | 2023/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

ラジオペンチ

Author:ラジオペンチ
電子工作を中心としたブログです。たまに近所(東京都稲城市)の話題など。60過ぎて視力や器用さの衰えを感じつつ日々挑戦!
コメントを入れる時にメールアドレスの記入は不要です。なお、非公開コメントは受け付けていません。
記事の内容のご利用は読者の自己責任でお願いします。

記事が気に入ったらクリックを!
最新記事
カテゴリ
最新コメント
リンク
FC2カウンター
検索フォーム
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード