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カレントトランス (秋月 SR-3702-150N/14Z) の特性測定

 ACの消費電力測定をやってみたくなったので、秋月で売っているカレントトランス(通販コード P-08960)を購入しました。

 実は、AC電源の消費電力測定は、だいぶ前に自作のカレントトランスを使っていろいろやっています。ただ、その時に使った磁気回路のコアの材質が悪かった、と言うか損失が大きくなるように作られたコアを使ったためだと思います。電流波形に30度くらいの位相ズレが発生するという大きな問題があった点が残念でした。

 そんな経験があったので、今回はちゃんとしたカレントトランスを買った次第です。

▼秋月で売っているカレントトランス (CT)
秋月のカレントトランス
 これは特性測定中の写真です。見掛けの電流感度を稼ぐために一次側に8ターンくらい線を通した状態で測定しました。

 ちなみに、これ単なるトランスなのに1000円くらいして、秋月で売っている他の部品と比べるとかなり値段が高いです。でもCTとしてはかなり安い値付けになっていると思います。

 あと、この CT は線を通すためにコアを開くことが出来る構造になっているのでとても使い易いです。ただ、秋月のWebにあるデーターシートには負荷抵抗(RL)が10Ωの時の特性しか書かれていないのですごく困ります。

 適用電流(最大電流?)が80Aということなので、かなり大きな電流を測定することを想定して作られているのだと思います。ただ、そういう仕様になっているために小さな電流の測定は難しくなっています。

 例えばこのカレントトランス (CT) で100Vで1Wの消費電力を行いたいとします。つまり一次側の電流は0.01Aです。この時の CTの二次側の電流は3.3μAとなり、負荷抵抗10Ωの両端電圧はたった33μVにしかなりません。直流ならともかく交流でこの電圧を正確に測るのはかなり大変です。もちろんオペアンプで電流検出すればいいのですが、これはこれでいろいろ面倒な話があります。

 そもそも、小さな電流を測定したい時にCTの負荷抵抗(RL)が10Ωというのは低すぎます。もっと高い抵抗にすれば電圧測定が楽になります。とは言っても、むやみに高い抵抗にするとCTとして正常に動作しなくなくなる領域に入ってしまいます。(あと、磁気コアの励磁電流の問題がありますが、とりあえずその話は置いておきます。)

 ということで、RLの値を変えて測定を行い、どれくらいの値まで抵抗を上げても大丈夫そうか調べてみました。

▼測定回路
回路図
 AC100Vの電源を使って測定するのは危険だし、振幅や波形の再現性が悪いと思ったので、ファンクションジェネレーター (FG) で発生させた50Hzの正弦波を信号源として使いました。Rtermの51Ωは FGの終端抵抗です。負荷抵抗(RL)の両端電圧をデジタルマルチメーター(DMM)のACレンジで測定して出力電圧(電流)の特性を行います。

 注:DMMのAC測定は、電源からの誘導ノイズの影響を減らすために電源周波数に同期したサイクルで測定を行うようになっています。そういう機能を活用するためには、ファンクションジェネレーターの出力をAC電源に同期させれば良かったのですが、そこまではやっていません。

▼測定風景
カレントトランスの特性測定
 配線はミノムシクリップで接続して行いました。ただ、配線の位置が動くと測定の再現性が悪化するので、要所をテープで固定しています。50HzといえどもAC測定なので配線のループに鎖交する磁束でノイズが乗ります。配線の形が変わったらノイズの量が変わると思って測定しないといけません。なお、このMDFのボードの裏側にはアルミ箔を全面に張り、測定系のGNDに接続しています。

▼測定器
使用した測定器
 一番上が信号源として使った HPの3314A、中段がAC電圧測定に使ったアドバンテストのTR6846、下は波形確認用のオシロです。

▼測定結果
負荷抵抗の違いによるKの変化
 横軸は通過電流で、縦軸は測定結果から計算した CTの結合係数 (k)です。RLの値を変えた場合の特性をプロットしています。なおRLは10Ω、30Ωも測定を行ったのですが、測定誤差が大きすぎてまともな結合係数が算出出来なかったのでグラフに書いていません。 

 このグラフによると、RLは1kΩ以下なら使えそうです。念のために波形も見ておきます。

▼RL=300Ωの場合の入出力電流波形
位相ズレ大@RL=10kΩ
 この条件では入出力の位相はほぼ一致しています。

▼RL=3kΩの場合の入出力電流波形
位相ズレ小@RL=300Ω
 入力電流(振幅の大きい波形)に対し出力電流(振幅の小さい波形)は30度くらい進んでいます。これではダメです。

 ということで、このCTの負荷抵抗の上限は300Ωくらいで使うのが良さそうです。(大電流を測ると保護用のZDでクランプされる点に注意)

▼実際の使い方
実際の使い方
 AC100Vラインの線をはんだ付けしたりするのは危険なので、100円ショップで買ってきた50cmのAC延長コードの中身をばらして中の線を CT に通します。この写真は5ターン通しています(行きが3ターン、戻りが2ターン)が、これくらいが限界だと思います。5ターン通せば感度は5倍になるので、その分検出は楽になります。

 なお、無理して線をいっぱい通すと、線の太さが原因で磁気コアの密着が悪くなって特性が悪化する恐れがあるのでこのくらいにしておいた方がいいと思います。

◆まとめ
 ということで秋月で売っているカレントトランスの負荷抵抗(RL)を変えた時の特性測定を行いました。たぶん300Ωくらいまでなら抵抗値を上げても大丈夫なようです。

 こういう特性はメーカーから公開してもらえると助かります。よく探せばどこかにデーターシートが存在するのかも知れません。

オシロの波形から冷蔵庫の消費電力を計算してみた

 台風で外は強風が吹いています。幸い休みなので、こういう日は外に出ずに家に篭っているにかぎります。

 さて、昨日の記事で冷蔵庫の電源電流波形を披露しましたが、せっかくなので(暇なので)波形から電力を計算してみました。

 前の記事と同じ写真ですが、コンプレッサーが動作中のこの波形から消費電力を計算します。

▼電圧、電流波形
冷蔵庫の電源電流波形、コンプレッサ動作時

 ちょっと粗いですが、10度置きに計算してみます。上下対称な波形なので180度まで計算すれば大丈夫です。

▼電圧データー
電圧波形
 波形歪みは無視して実効値が100Vの正弦波でデーターを作ります。

▼電流データー
電流波形
 値は写真に撮ったオシロの波形から適当に読んでデーターにします。カレントトランスで位相が30度進んでいるのも補正します。

▼EXCELで計算
計算表
 電圧と電圧の瞬時値を掛け合わせた値の平均値が有効電力で、表の右下にある35.95が消費電力(W)になります。

 念のために電流の実効値を計算してみると、0.661A。これに100Vを掛けると皮相電力は66.1VAとなり、これまでの記事でコンプレッサー動作中の電力と言っていた値とほぼ一致します。同様に電流の平均値を計算してみると0.439Aで、Arduinoで計算/表示していた値と一致します。

 ということとで、値の矛盾は無さそうなので、消費電力は35.95Wと決定します。これかなり小さな値で、さすが現代の最新型冷蔵庫です。但し力率は54.4%で、これはあまり褒められた値ではありません。

【あとがき】
 実はこの冷蔵庫の消費電力を最初に測った時に少し違和感を感じていました。というのは、最新鋭の省エネ機という割には、以前使っていた16年前の冷蔵庫と比べて、半分くらいにしか消費電力が減ってないデーターだったからです。古い冷蔵庫と比べると最近のものは1/4くらいに消費電力が減る、というのが定説なのにどういうことなんだろう?と思っていました。

 とは言っても皮相電力しか測定出来ていないので正確な消費電力の議論は出来ません。うーん、冷蔵庫のように消費電力が大きい機器で力率がすごく悪いなんてことはあるのかなー、それも最新機種なのに・・、なんて考えていました。

 で、今回の発見は、冷蔵庫の力率はかなり悪い。なので、皮相電力だけ測定しても正確な消費電力判らない。ということになります。

 まあ、力率が悪いといっても消費電力の絶対値はかなり減っているので、昔の冷蔵庫と比べて無効電力が増えているということは無いと思います。

冷蔵庫の消費電力測定、電流波形はどうなっている? (Panasonic NR-F568XG)

 冷蔵庫の消費電力をいろいろと測定して記事にしています。ここで気になっているのが、消費電力といいながら実際に測定しているのは電流の実効値である点です。

 電源電圧はほとんど変化しないと仮定しても、電流測定から得られる値は皮相電力(VA)であり、電力(W)ではありません。もちろん記事中では何度もその点はお断りを入れていますが、自分としては気持ち悪さを感じていました。

 ちゃんと電力測定やるには電圧と電流の瞬時値を掛け算して合計すればいいのですが、かなり面倒です。そこですぐにやれることとして、電流の波形を見てみました。

 ちなみに昔は電圧と電流の位相差θから力率=cosθなんてやって電力を求めていました。でも現代のように半導体で非線形な反応をする物ばかりになちゃうと、cosθなんて持ち出すのはナンセンスになります。

▼冷蔵庫の消費電流波形の測定
冷蔵庫の前にオシロ
 冷蔵庫の前にオシロをひっぱり出して来て測定しました。

 この冷蔵庫は消費電流が少ない時と多い時の比率を変えて運転されています。

▼消費電力が少ない時
冷蔵庫の電源電流波形ー1
 上(CH-1)が電圧波形で、小さなAC電源トランスを通して測定しています。下(CH-2)が電流波形で、自作の電流測定アダプタの出力です。

 電流測定アダプタの感度は10mAあたり1mV。 10mA×100V=1Wなので、抵抗負荷なら1W=1mVという関係で電力測定が出来ることになります。CH2の感度は管面のリードアウトの通り50mV/Divになっています。

 実はこの電流測定アダプタのカレントトランスは30度も位相の進みがあることが判っています。オシロの1目盛りは90度なので、真の電流波形は右に1/3目盛りだけシフトした位置にあることになります。

 測定条件の話はそれくらいにして、この波形の意味を解説すると、

  電圧とほぼ同相で、0-Pで0.1A程度の波形と、短時間のパルスで3Aが流れていることになります。これをマイコンでは実効値が5~6mVと判断していたことになります。

▼コンプレッサ動作時
冷蔵庫の電源電流波形、コンプレッサ動作時
 電流が大きくなっています。CH2の感度は100mV/Divになっています。

 最新の冷蔵庫なのでPFC(力率制御)くらいやっていると思ったのですが、そんなことやっている気配は無いようです。

 マイコンなどの情報機器では、国際エネルギースタープログラムで効率を上げることと同時に、PFCをやって電流波形を正弦波に近づける努力が行われています。でも冷蔵庫はそんなことやってないんですね、ちょっとがっかりです。

 で、電流波形を見ると、ピークが2A程度のスパイク波形と、0.2A程度の矩形波が重畳した波形になっています。スパイク状の波形はAC100Vを整流する時に平滑コンデンサを充電するために発生する電流なんでしょう。

 マイコンはこの波形から実効値は60mV,平均値は40mVという値をはじき出していたということにいなります。

 ちなみに平均値と実効値の比率は正弦波だと1.1倍。それに対してマイコンが計算した値は1.5倍なので、かなり歪んだ(尖った)波形だとは想像していましたが、やっぱりちゃんと測定しないとダメですね。

 ざっと波形を見た感じでは力率は80%も無い感じです。この写真から電圧と電流の瞬時値のテーブルを作り、EXCELで計算すれば電力を求めることが出来るはずです。やってみるかなー、でも面倒です。
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