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DVDのメディアで簡易分光器を作る-その4、(デジ1使って撮影)

 DVDの媒体ディスクを使った簡易分光器作りの話は一旦終わりにしていたのですが、セッピーナさんの記事を見ていると、どんどん性能を改善されています。

 一旦終わりにした理由は、この時使ったコンデジではピント合わせが難しいという点でした。だったらデジタル一眼レフを使えばいいのですが、そのためには重いカメラをしっかりと固定するための構造物を作らないといけません。でも私が作った分光器は段ボール箱で出来ているので、これを頑丈にするのはほとんど不可能でです。

 ということで、やりようが無くなってしまい放置していました。ところが、カメラを別の三脚で固定すればとりあえず撮影出来そうなことに気付きました。

▼三脚を二つ使ったスペクトル撮影装置
三脚を二つ使ってスペクトル撮影
 段ボール分光器の観測用の穴から覗き込むようにしてスペクトルを撮影します。余計な光がレンズに入り難いようにするため、穴を開けた黒い紙を使っています。人が動くと床のたわみでスペクトルの位置が動くので、撮影中はじっとしていないといけません。ということで、赤外リモコンを使ってカメラに触れないでそっとレリーズしました。

 なお、以下の撮影は全てスリットギャップ75μ、スリット・回折格子間の距離は180mmで行っており、上の写真のように窓の外の雲の光を分光しています。

▼撮影用機材
使った撮影機材
 カメラのボディはキャノンのEOS70D。レンズはEF70-200/F4L(この写真でボディに装着している物) と EFS60/F2.8マクロの二本を使いました。どちらのレンズも解像度はかなり高いはずです。またフォーカシングなどの操作を行ってもレンズの全長が変わらないので使い易いはずです。

 以下はスペクトルの撮影結果です。まずは60mmマクロから、

▼撮影結果 (写真をクリックすると別窓にもう少し大きな写真を表示)
EFS60マクロレンズで撮影
 EOS 70D, EFS60mm/F2.8マクロ, f/4.5, 1.3sec, ISO400, WB:DayLight

 スペクトルが傾いているうえに少し露光がアンダーですが、カメラで撮ったままのjpeg画像です。(リサイズしています)

 露出はマニュアル設定。ピントは液晶画面のライブビューで拡大画像を見ながらマニュアルで合わせています。なお、画像はものすごく暗いので、ファインダーからピントを合わせすることは出来ません。暗幕かぶって目を慣らせば出来るかも知れませんが、拡大ライブビューの精度にはかなわないと思います。

▼傾きを修正してトリミング(元画像は上とは別の写真です)
EFS60のスペクトルを切り出し
 拡大して見ると、b1, b2, b4 の吸収線がはっきりと確認出来ます。以前はb2とb4をはっきり分離して見ることが出来ませんでした。なお、b1線付近にピントを合わせている影響だと思いますが、画面端の近くのD1,D2線ははっきりと分離出来なくなっています。

▼望遠ズーム(EF70-200/F4L)のテレ端で撮影
EF70-200のテレ端で撮影
 EOS 70D, EF70-200mm/F4L, FL:200mm, f/8, 2.5sec, ISO400, WB:DayLight

 レンズの焦点距離が長いので拡大(望遠)撮影になっています。ちなみに35mm換算の焦点距離は316mmで撮影しています。E線からb1線あたりが画面の中央になるように撮っています。

▼上記画像のb線からE線あたりを拡大
Mgのb1,b2,b4線
 Mgのb1, b2, b4の吸収線がはっきりと分離できています。なお、60mmのマクロレンズ(EFS60/F2.8)で撮影した画像でも単に小さく撮影されているだけで、画像としての情報量は同じ感じでした。つまり、撮影系の空間分解能にはまだ余裕がありそうで、性能は分光器の色分解能で決まっている状態です。

 以前の記事では、ピント合わせの問題からスリットのギャップは100μにしていましたが、今回はデジ一を使ったので、ギャップの小さなスリットでも撮影が可能になりました。そのおかげで b2 と b4の分離が出来たのだと思います。

 ちなみにb2 の波長は517.27nm、b4の波長は516.733nm で、両者の差は0.537 nm。つまりこの値以上の分解能が得られていることになります。間隔が半分になっても検知出来そうな気配なので、0.25nm くらいの分解能になっている感じです。

 ということで記事を書き終わってセッピーナさんのサイトを見てみると、半値幅0.05nmまで到達されています。スリット・回折格子間距離 350mm、スリットギャップ50μでやられた、ということなので色分解能はうちの約4倍あるはずで、なるほど、理屈通りの結果になっているようです。ちなみに光量不足対策として太陽の直射光観察でやられています。

 使っている回折格子(DVD-R)の色分解能にはまだ余裕があるそうなので、どこまで分解能が上がるか興味深いです。

DVDのメディアで簡易分光器を作る-その3、(まとめ)

 このあいだから取り組んでいるDVDの媒体円盤を使った簡易分光器作りですが、ほとんど進歩が止まったというか、いじると逆に改悪になっちゃったりしています。きちんと精度良く工作すればもっと改善の余地もありそうなのですが、手持ちの機材でこれ以上改善するのは難しい気がしてきました。

 ということで、これまでに得られたデーター(写真)をまとめて、この話は一旦終了にしたいと思います。なお、以下のスペクトル写真はトリミングやリサイズを行っていますが、画質の調整は行っていません。つまりカメラが吐いたjpegのままです。

▼DVD分光器で取得した蛍光灯のスペクトル
蛍光灯のスペクトル
 もっと連続的なスペクトルになっていると思っていたのですが、けっこう凸凹があります。それに鋭い輝線もあります。もやっとしたスペクトルは蛍光体の発光だと思います。

 左の青の部分にある輝線は水銀のg線で、昔の半導体プロセスで使われていたg線露光機というのは、この波長の光を使っていたことになります。

▼太陽光のフラウンホーファー線
フラウンフォーファー線
 右端のB線はちょっと自信がありませんが、それ以外はたぶん合っていると思います。実はこの写真はこの前の記事に使ったものです。つまりその後で、これを上回るクォリティの写真は撮れていません。 

▼DからEを拡大
D線、E線
 D線がD1,D2の二本に分かれていることが確認出来ます。この吸収線はナトリウムによるもので、オレンジ色のナトリウムランプの波長です。

 ちなみにD1,D2線は磁界により分裂するそうで(ゼーマン効果)、太陽黒点の磁場分布はD線の構造を調べれば判るそうです。D1,D2の分裂具合を比較すれば磁界の方向まで判るというのだからすごい話です。

 E線の左にb1とb2 + b3 b4 が確認出来ます。(写真にb3と書き込んでいますが、これはb4の間違いです)

 ということで、目標としていたフラウンホーファー線は確認できたので当初の目標は達成できました。ここまでやるのにセッピーナさんのDVD簡易分光器の一連の記事が大変参考になりました(現時点の最新記事はこちら) ありがとうございます。

▼現在のDVD簡易分光器の状態
三脚に載せた分光器
 旅行に持っていく小さな三脚に据えています。

 ところで、セッピーナさんの実験結果を拝見するともっと高い分解能が出ています。私もがんばったのですが、残念ながらセッピーナさんのレベルに届きませんでした。この原因として考えられるのは、
 1)スリットまでの距離が180mmと短い。
 2)カメラの感度が低い、またフォーカス合わせが難しい。
 3)カメラのレンズを回折格子に近づけすぎ?

1)項は後にして、2)項から説明します
 使ったカメラはキャノンのコンデジの S110 を使っています。フォーカスはマニュアルでやっていますが、フランホーファー線のような画像にピントを合わせるのは難しい、というかピントの山が判り辛いです。

 だったらオートフォーカスを使いたいのですが、このカメラはシャッター速度が1秒以上になると、なんと信じられないことにISO感度が80に強制的に下げられてしまいます。こうなると画像が暗くなってしまってオートフォーカスがうまくかかりません。ちなみにマニュアル露出でISOを1600とか設定していても、シャッター速度が1秒以上になると自動的にISO80に変更されれてしまいます。なんとも勝手な仕様ですが、キャノンのコンデジはみなこういう仕様になっているようです。

 そんなことで、せっかく75μのスリットを作ったのですが、これでは暗くてピント合わせがほとんど不可能です。仕方ないので 100μのスリットを使っています。また、1)項のスリットまでの距離を伸ばすと明るさの問題は悪化するのでこれも採用出来ません。

 3)項は考え難いのですが、段ボール箱に開けた穴を拡大して、より深くカメラを差し込むようにして以来、色分解能が悪くなったような気がするのであげてみました。

◆あとがき
 物理の教科書で、フラウンホーファー線の発見からボーアの原子模型にたどり着くあたりの話は、一番好きで何度読んでもわくわくします。あと、三鷹の国立天文台に行くとアインシュタイン塔という施設があります。この塔を使って太陽光スペクトルを詳細に調べることで、相対論の検証を試みた、(そして失敗した)ということが資料に書かれていました。真理を追究するためならここまでやるのか、と感銘を受けました。

 そんなことで太陽光スペクトルはちょっと関心があったので、セッピーナさんの記事をきっかけに自分でもやってみました。フラウンホーファー線を実際に確認することが出来てよかったです。セッピーナさんに感謝します。

DVDのメディアで簡易分光器を作る-その2、(フラウンホーファー線が何とか見えた)

 このところ進みが遅いのですが、DVDの媒体円盤を使った分光器の改良を少しずつやっています。とりあえず一息つける状態になったと思うので、現在の状況を記事にしておきます。

 やりたかった改良のポイントは光路の位置合わせ精度の改善です。というのは、以前作った物はなかなか干渉縞をカメラの中央に捕らえることが出来ませんでした。手っ取り早く作りたかったので段ボール箱の中心に基準線を書き、その線に沿って部品を配置しただけの代物です。特に回折格子の固定方法がいい加減だったので、光軸合わせがめちゃめちゃ難しかったです。それに、時間をかけて調整したのに、ちょっと傾けると簡単にずれてしまうという始末です。

 これではストレスが溜まるので、もう少しまともな構造に作り直しました。DVDの分光器作りはセッピーナさんという先人の方が詳しく解説されているので、その通りにコピーを作れば良さそうなものです。(現時点のセッピーナさんの簡易分光器に関する最新の記事)
 でも全く同じ物を作るのは楽しくないし、既に作っちゃった部分もあります。そこで、手持ちの物を出来るだけ生かしつつ、セッピーナさんの真似をして作業を進めました。

▼現在の姿
DVDを使った簡易分光器
 回折格子の固定/回転にバーニアダイヤルを使いました。こうすれば精度良く回折格子の角度を変えることが出来ます。こういう部品が部品箱から出ると年がばれる、いやとっくにばれてますね。

 なお、前回の工作で開けた穴は厚紙とテープで塞いでいます。また、光が通っているのはこの写真に写っている箱の手前の部分だけなので、後ろ側の部分は切断・除去しちゃってもいいのですが、面倒くさいのでそのままにしています。

▼入射窓
光の入射口
 黒い横長の長方形が入射窓で、上下に二つ作りました。使うのは一つだけで、使わない方はテープで塞ぎます。なお実際に使う時は、光を入れる窓には入射スリットを取り付けて使います。

 上の窓はセッピーナさんの設計と同じ位置(角度)で、下の窓は入射角度とカメラの光軸を90度にしたものです。入射角を90度にするといろいろ好都合だと思ったのですが、実際に使ってみると回折格子の角度の調整が微妙になりすぎて、使い難い物になってしまいました。ということで下の窓は使いません。ちなみに下の窓を使うと、回折格子への光の入射角は13度くらいになるはずです。

 ともかく、入射窓は上の方を使うことにしました。

▼側面、上面
側面
 スリットから回折格子までの(水平)距離は180mmです。上面にはカメラのレンズ部の円筒がすっぽり入る穴を開け、そこにカメラを落とし込んで使います。間違い防止のために、決まっている寸法は本体に書き込んでいます。

▼内部
内部、回折格子とカメラレンズ
 内面は反射防止のために、つや消しの黒のアクリルスプレーで塗っています。ちなみにこれ、ダイソーで100円で売ってます。

 回折格子はφ6mmの棒(丸い割り箸)を半円をちょっと過ぎるあたりまで削り、回折格子の表面が回転中心と一致するようにしておいて、両面テープで固定しています。入射窓から覗いてみて、回折格子が正対するようにバーニアダイヤルを廻すと自分の目が見えるはずです。もしこの像がバーニアダイアルの軸方向にずれていたら、回折格子の取り付け角度がズレているはずなので、調整します。

 入射窓にはスリットをテープ止めして使います。以下、いろいろ試したスリットです。

▼金属ナイフエッジスリット
カッターの刃で作ったスリット
 これはカッターの刃で作ったスリットです。実体顕微鏡で見ながらホットボンドで刃を固定して作りました。φ0.14mmくらいのより線の素線を寸法の目安に使って作業し、ギャップが100μくらいになる感じで作った物です。刃の部分には反射防止のために黒のマジックインキを塗っています。

 カッターの刃を使うと幅の広いスリットが作れますが、あまり幅の広いスリットはいらないようです。それに、もっとギャップの小さなスリットを作りたくなったので別の方法を試します。

▼アルミフォイルスリット
アルミ箔で作ったスリット
 最初はアルミ箔にナイフで切込みを入れたものを使っていたのですが、この方法ではあまりギャップの小さなスリットを作ることは出来ません。

 そこで、アルミ箔をぴったりと折り畳んで一直線のエッジを作り、これを二つ向き合せることでエッジを作りました。アルミは柔らかいので変形させないように注意し、少しテンションをかけて一直線の状態を保ちながら固定するのがコツです。この作業も実体顕微鏡で見ならがら行っています。

 こうやって作ったスリットの寸法を測ってみます。

▼スリットの寸法を測ってみた
スリット高さの測定
 下側のアルミ箔の折り曲げに少しシワが入ってます。幼稚園ならもっと指でしっかりアイロンしましょうね、ということなんでしょうが手加減が難しいです。ともかく一直線のスリットが出来ていました。

 ちなみに、この写真のアルミ箔の表面には横向きのテクスチャがあります。これって、アルミフォイルの圧延方向なんでしょうか。私はスリットを作る時にアルミ箔のマット面が表になるように折り畳んでいるのですが、圧延方向も考慮したほうがいいのかもしれません。

 そういう細かい疑問があるのですが、顕微鏡の接眼レンズに入れるマイクロスケールをスリットの上に置いて寸法を測ってみました。このスケールの一目盛は100μなので、ギャップの寸法は75μくらいに出来ています。

 この状態で観察したらフラウンホーファー線が見えてきました。

▼太陽光スペクトル
フラウンホーファー線
 Canon S110, FL:17.6mm, f/8, 15秒, ISO:80, WB:DayLight

 やった甲斐がありました、有名な吸収線がいくつか見えているようです。

 次回はこの分光器をもう少し改良・調整して、輝線や吸収線の波長を特定していきたいと思います。なんだか 18 19世紀の物理学者になった気分です。
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