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アドバンテストのユニバーサルカウンタ TR5822 の消費電力

◆まえがき
前の記事でユニバーサルカウンタ TR5822 の内部を見ましたが、今回は消費電力を測定してみます。

・ユニバーサルカウンタ TR5822
アドバンテストのユニバーサルカウンタ TR5822

・背面
TR5822の背面
このカウンターは電源スイッチをOFFにしても、内部の基準オシレーターにはずっと通電されていて、使用開始時のドリフトを小さくするような仕掛けになっています。つまりスタンバイ状態でも電力を消費するのですが、以前その値を測定したら結構な量でした。そのあたりの仕掛けがどうなっているのか、中の回路を確かめると共に、ちゃんとした電力計を使って消費電力を調べてみました。

◆電源回路の構成
電源トランスが使われていますが、その配線をよく見ると、

・AC電源の配線
TR5822の電源回路
上の写真の緑色のラインがAC電源の1次側との境界ですが、このラインを跨ぐ配線はありません。つまり、AC電源はヒューズとノイズフィルタを経由して電源トランスに直結されているだけです。操作パネルに電源スイッチはありますが、これはACラインのスイッチではなく、トランスの2次側の回路をON/OFFしているようです。(正確には整流後のDCをON/OFF)

こういう回路ではトランスは常に励磁されているので、それだけで電力を消費します。だったら実際にどれくらいの消費電力になっているのか、AC電力メーター PZEM-020を使って測定してみました。

◆電力測定結果
以下、測定結果を PZEM-020 の画面を使って示します。

1)測定中の消費電力
16.4W
消費電力 19.4W、消費電流 0.24A、力率 81% で妥当な値だと思います。ちなみに仕様上の最大消費電力は38Wとなっています。なお、表示する桁数が増えると少し消費電力が増えました。昔のLEDは電気をいっぱい喰います。

2)電源スイッチOFFの状態
4.08W
電源スイッチをOFFにした状態、但しACプラグはコンセントに刺さったままなので待機時ということになります。
消費電力 4.08W、消費電流 0.097A、力率 42%です。最近の家電製品と比べると待機時電力がアホみたいに大きいです。これがいやだったので、このカウンタの電源は独立スイッチ付きのコンセント経由で供給し、カウンタを使う時だけそのスイッチをONにして使っていました。

さて、この4.08Wはトランスの励磁電流(正確には鉄損)と基準オシレーターの消費電力を合計した値ということになります。基準オシレーターの電源を切ればトランスの消費電力だけ測定できるはずなのでやって見ました。

・基準オシレーターのコネクタを抜く
基準オシレーターのコネクタを抜く
緑矢印が基準オシレーターの接続コネクタなのでこれを抜きます(写真は抜いた状態です)。これで、トランスだけの消費電流が測定できるはずです(たぶん)。

3)トランスだけの消費電力
3.83W
消費電力 3.83W、消費電流 0.096A、力率 40%でした。これがトランスの無負荷時消費電力(=鉄損)と考えて良さそうです。電源トランスの損失って結構大きいんですね。ちなみに負荷をかけるとその分だけ銅損が上乗せされます。

前の測定との差の0.25Wが基準オシレータの消費電力ということになりますが、これは納得できる値です。

ちなみに、基準オシレータの基板はこんな物 (クリックで別窓に拡大)
TR5822の基準オシレーター
計測器メーカーの設計だけあって、作りが良いです。
この基板は、vabenecosi さんの「周波数カウンタTR5821の改造」という記事に回路図などの解説があります。

TR5822の基準オシレーター
5Vの三端子レギュレーター (78L05) でこの基板用の電源を作っているようです。

◆まとめ
このユニバーサルカウンタの待機時消費電力は4.08Wということになりました。小さな値に感じますが、コンセントに挿さったままだと1年間で35.74kWhの消費電力になります。電力単価を 25円/kWh とすると、1年間で 893円の電気代になる訳で、便利さの代償としては大きすぎると思います。

そうは言っても、これはプロ用の計測器なので、こんなみみっちいことを言ってはいけない相手ではあります。使い方の工夫で解決するのが良いでしょうね。

ユニバーサルカウンタ TR5822の内部

◆まえがき
最近周波数カウンタ、というかユニバーサルカウンタを使うことが多いのですが、古い機種なので測定結果をパソコンに取り込むことが出来なくて不便です。

・ユニバーサルカウンタ TR5822(アドバンテスト製)
周波数カウンタ、TR5822

上限周波数は120Mhzまでですが、ユニバーサルカウンタなので機能が豊富で入力回路も良く出来ているので使い易いです。もちろん中古をオークションで購入したものです。

内部に測定結果をシリアルで流しているところがあれば、信号を引き出してPCに接続することが出来るかも知れません。ということで、分解して中を調べてみました。

なお、先に結論を書くとそういうことは出来ませんでした。ということで、以下の記事は内部の紹介だけなので、興味のある方だけお読みください。

◆分解 (以下の写真はクリックすると別窓に少し大きな写真を表示します)
・ケースを開ける
TR5822の内部
中にはホコリなど入っておらず綺麗です。ケースの密閉度が良いのでしょう。あと、ケースの内面は銅のペーストで塗装されていてシールドになっています。

スイッチング電源ではなく、電源トランスが使われています。タイラップなんて使わず、配線は紐で縛ってあります。

トランスの右のモジュールは基準周波数用の10MHzのオシレーターで、電源トランスとヒートシンクの間に置くことで温度を早く上昇させ、熱的外乱の影響を小さくしているのだと思います。(そうは言っても結構な初期ドリフトがあります)

なお、この写真の上の方にに横向きに写っている基板はアナログ出力基板です。GP-IB仕様ならここにはGP-IBインターフェイス基板が挿さるはずです。

・メイン基板
TR5822のメイン基板
左半分のベタアースに囲まれた部分が入力回路、右半分がロジック回路です。

・ロジック回路部
TR5822のロジックLSI
LSIが3個使われていて、入力に近い方(写真の右)から、MB15507(富士通)、MB860114(富士通)、MK3870/40(MOSTEK)が使われていました。

MK3870がCPUですが、データーシートを見てみるとシリアルポートなどは入っていませんでした。今でこそシリアルポートは当たり前のようにCPUに内蔵されていますが、昔は別のチップが担当するのが普通でした。

ともかくそういうことで、シリアル経由ででデーターを抜くということは出来ませんでした。それでもあきらめきれずにオシロであちこち触ってみたのですが、簡単にデーターを取り出せそうなピンは発見できませんでした。たぶん8ビットくらいのパラレルインターフェイスで情報が出ている感じです。

回路図があればなんとかなるかもしれませんが、それもネットで発見できなかったので万事窮すです。ちなみに取説に書かれているブロック図(下記)は以下の通りです。

・ブロック図
TR5822のブロックダイアグラム

・操作パネル裏の基板
前面パネルの裏側
ピンの雰囲気からすると、この反対側にもLSLが載っていそうです。

ボリュームの下の未実装のスルホールは、TR5823で使う INPUT C(1.3Ghz入力)用の部品スペースだと思います。

◆まとめ
あわよくば改造してしまおうかと思って分解したのですが、残念ながら歯が立たなかったです。でもプロ用計測器だけあって、作りがしっかりしているので目の保養になりました。

赤外線放射温度計を買ったのであれこれ調べてみた

Aliexpress に安い赤外線放射温度計があったので買ってみました。

▼赤外線放射温度計
赤外線放射温度計
手のひらにすっぽり収まるくらい小さな温度計です。表面はゴム系の感触ですが、あの加水分解でベタベタになるプロテイン塗装とは違った感じで、すべすべしていて清潔感があります。

▼Aliexpress の商品のページ (図をクリックで別窓で商品のページ)
Aliexpressのページ
DT8220という型番がプリントされていますが、商品説明の詳細を見ると、モデル番号:C0970-01、メーカー:Inperlanyu です。

ガンタイプの赤外線温度計だと、レーザーマーカーで測定の中心位置が判りますが、そういう機能はありません。温度の測定範囲は、-50~220℃と書いてありますが本当はどうなんだか判りません。ちなみに値段は送料込みで $5.5 でした。
なお、Amazonにもそっくりな形の物が出ていましたが、URLはここには書かないでおきます。

▼温度測定部
受光部
テーパー状の金属パイプの奥に受光窓があります。パイプの内壁で赤外線を反射させて受光窓に送り込むことで、感度を稼ぎながら指向性を出しているのだと思います。広い波長範囲の赤外線を集める光学系をローコストに作るため、こいう金属表面の反射を利用した光学系になっているのでしょう。マイクロ波のホーンアンテナみたいなものと考えれば良さそうです。

Aliexpress の商品説明には検出距離は1~8cm と表示されているだけで、スポットサイズの表記がありません。でもAmazon の同等品?と思える商品の説明には測定距離とスポット径との比率は 1:1 との記載がありました。つまり、例えば距離が1cmならスポット径は1cmと考えれば良さそうです。実際に使ったみてもそんな感じでした。

さて、ここまでが外観のレポですが、こういう面白そうな物が来たら、中まで見るのがうちのしきたりです。

▼内部
放射温度計の内部
電源はボタン電池の LR44 が2個使われていました。COBの横の8ピンのICは、マーキングが24C02となっているので EEPROM でしょう。ここにはセンサーのキャリブレーションの値が入ってそうです。

基板のどこかに温度測定結果がシリアルの信号で流れている場所が無いか探したのですが、残念ながら発見出来ませんでした。信号が引き出せればPCに接続していろいろ面白いことが出来るのですが、とりあえず断念。

▼内部
放射温度計の内部、液晶取り付け側
液晶と受光光学系の金属テーパー管を外した状態です。

▼センサー
放射温度計センサー
センサーは4ピンのハーメチックシールのパッケージに入っていました。この窓の材質は何でしょうね。

▼消費電流測定
赤外線放射温度計の消費電流測定
電源の線を引き出して消費電流を測ってみました。

▼消費電流
電源OFF時の消費電流
この写真は待機時(液晶表示無し状態)で、消費電流は0.8μAでした。LR44の容量が120mAhあるとすると、10年以上電池が持つ計算になります。でも、たぶん電池の寿命、あるいはお漏らしの方が先に起きそうです。

動作時の消費電流は約1mAだったので、連続動作時間は120時間という計算になります。なお、測定後15秒で自動的に待機状態に移行して消費電流 0.8μAの状態になるので、電池の消耗は考えなくても良いのではないかと思います。

ここまでは回路や電気特性の話でした。以下は一番重要な温度の測定結果です。なお、温度測定はボタンを押してる間は繰り返し行われ、ボタンを離して15秒間は測定結果がホールドされ、その後はOFFとなります。

▼50℃のアルミ板の温度を測定
50℃を測定
ペルチェ素子を使った一定温度発生装置があるので、その熱板の温度を測ってみました。

結果は、50℃の熱板の温度を測ると、24.5℃と出ました。それじゃダメじゃんと言われそうですが、この結果は予想通りです。熱板の材質はアルミで、放射率が低いためこういう測定結果になります。ちなみに放射率が低いということは反射率が高いということで、反対側に手のひらをかざすと、体温が検出されて測定値が上昇します。

こういう時は対象物にマスキングテープなどを貼ることで正しい温度が測定出来るようになります。

▼10℃の熱板
10℃を測定
アルミ板の温度は10℃なのですが、上の測定結果と同じ理屈で、温度計の表示は22.2℃と出ました。部屋の壁や天井から出ている赤外線が、アルミ板で反射されて検出されているのだと思います。

そんなことで、電子工作で放熱に良く使うアルミの温度測定には注意が必要という結果になりました。

もう一つ、今度は実用的な温度測定の事例を紹介します。

▼水草水槽
水槽
リビング小物として小さな水草水槽を置いています。この水槽は太陽時計算に基づく照明の明るさと色調制御に、チューブポンプを使った化学反応式CO2供給装置が付いていて、無駄に凝った仕掛けが付いています。

この水槽にはレッドビーシュリンプを何匹か入れているのですが、温調をしていないので冬は水温が下がるため、エビ君の動きが少なくなっていました。ヒーターで加温してやれば良いのですが、こんな小さな水槽(水量2.4リットル)には仕掛けが大げさすぎます。

そんな問題の対策として、今年の冬は水槽の下に、WiFiのアクセスポイントを置いて、その発熱で水槽の温度の低下を防ぐようにしています。水槽の下にわずかにLEDが光っているのが見えますが、これがWiFiのアクセスポイントです。これならどうせ無駄に捨てていた熱を利用することになるので、追加のランニングコストはゼロの対策になります。

▼加温の効果の測定
水槽のベース温度測定
水槽と下の布製の敷物の境界付近の温度を測定しているのが上の写真で、30.4℃あります。ここから外れた場所の温度は25℃程度なので、差分が加温の効果ということになります。こういう温度測定を接触式のセンサーでやるのは面倒、というか布製品の表面温度なんて接触式ではうまく測れません。しかし、放射温度計を使えば簡単に測定することが出来ます。

◆まとめ
安いので面白半分で買った放射温度計ですが、結構正確な温度が判るので十分役に立っています。何しろ非接触で測定出来るし、手でスキャンすれば温度分布もおよそ判るのでとても便利です。

ただこの記事の事例のように、金属の表面は放射率が低いために大きな誤差が発生するので注意が必要です。
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