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実体顕微鏡 SMZ-2B の分解と清掃

愛用しているニコンの実体顕微鏡(SMZ-2B)の光学系の汚れが気になってきたので、思い切って分解して清掃してみました。

以下はその状況です。出来るだけ詳しい様子が判るように、いつもの記事より写真のサイズを大きくしています(500x375画素)。写真の枚数も多いので、ブラウザに表示するのに時間がかかるかも知れませんがご容赦ください(写真のデーターだけで2.4MBくらいあるはずです)。またすべての写真はクリックすると倍のサイズで別窓に表示します。

▼ニコンの実体顕微鏡 SMZ-2B
ニコンの実体顕微鏡 SMZ-2B
こんな顕微鏡です。10年前に中古をヤフオクで買いました。

▼光路内に汚れ
内部に曇りとカビ
これは接眼レンズを外して中を覗いた写真です。判り難いですが、カビがあるのと、ホコリが溜まっているのか光路全体が白っぽくなっています。これをクリーニングするのが分解の目的です。

以下分解の手順を写真で説明します。

▼倍率調整ツマミを外す
倍率ツマミの取り外し
2mmの六角レンチでイモネジ(A)を緩めるとツマミが外れます。
Webの記事を読むとこのネジがトルクスになっている物があるようですが、この顕微鏡は普通の六角レンチが使えました。

▼カバー固定ネジ
カバー固定ネジ
ツマミを外すとカバーの固定ネジ(B)が出てくるので、これを外します。

▼カバーを外した状態
カバーを外した状態
中身が見えてきます。なお、外したカバーはプラスチック製です。

▼外したカバーと本体
プラカバーを外した状態

▼後ろ側
内部、プリズムは光軸傾け用
光軸傾けプリズムが見えてきます。実体顕微鏡の光軸は観察ポイントを先端としたV字型になっているので、プリズムも微妙に傾いて取り付けられています。

次に接眼レンズの正立プリズムを外しますが、そのためには先にDのネジを外します。

▼目幅調整間隔規制ネジ
目幅調整範囲規制ネジ
このネジ(D)で接眼レンズの間隔(目幅)の調整範囲が制限されています。正立プリズムを外すためには先にこのネジを外す必要があります。

▼正立プリズム取り外しネジ
目幅を広げると固定ネジが現れる
ストッパーが無くなったので目幅を最大限に開くことが出来るようになりました。すると、隠れていた正立プリズムの下側の固定ネジ(E)が見えてくるのでこれを外します。これで正立プリズムごと接眼レンズ側のアセンブリを外すことが出来ます。

ここまでの話を整理すると、光学系の清掃を行うためには(E)のネジを外して接眼部を外さないといけないのですが、そのためには(A)、(B)、(D)、(E)の順にネジを外して分解していく必要がある、ということになります。表から見えるネジを出来るだけ少なくするために、こういう構造にしたのでしょう。

▼光軸傾斜プリズム
プリズムの固定ネジとストッパー
光軸傾斜用のプリズムを(G)のネジを緩めて外します。
このプリズムは赤矢印で示した3箇所のストッパーで位置決めされているようです。組み立て時には指で長い赤矢印の方向に押しながらネジ(G)を締めれば元の位置に戻せると思います。そうは言っても、分解する前には位置合わせ用のマークをケガキで入れておくと安心です。

▼光軸傾斜プリズム
光軸傾けプリズム
下からの光軸を、観察者の目線方向の手前45度方向に傾けるプリズムです。最初の反射はプリズム内面の全反射で、二回目の反射はプリズム外側にコーティングされたミラーの反射で行っています。2回反射させることで像の方向を戻しながら光軸を45度倒す仕掛けになっています。

このプリズム面にカビが生えていたので清掃しましたが、幸いクリーニングすると痕跡が判らないくらい綺麗になりました。なお、カビが生えていたのは接眼レンズ側から見た最初の面でした。やはり、外から異物が付着する可能性が高い面にカビが生えやすいようです。プリズムの他の面にも微妙なシミや曇りがあったので、クリーニングしておきました。外側から見えるアルミミラーは光が反射する面ではありませんが、ここに汚れが付着していると、そこが原因になって腐食を起こしかねないので綺麗にクリーニングしておきました。

このプリズムを見ているとコバ面を黒く塗りたくなるのですが、今回は余計なことはしないでおきました。

▼下部光学系を上から見る
下部部光学系
ここまで分解すると下側の光学系が姿を現します。外したネジ(C)、(E)の位置を書き込んでおきました。

この写真に見えている二つのレンズが曇っていました。このレンズを対物最終レンズと呼ぶことにします。

▼ズーム機構
ズーム機構
下側のケースは(C)のネジを外すと取り外せ、ズーム機構が見えるようになります。

倍率調整ツマミを回すとレンズが2群に分かれて前後に移動するようになっています。V字型に傾いている左右の光軸に沿ってレンズを動かす仕掛けになっているのですが、ものすごくうまく出来ていて動きもスムースです。

▼最終対物レンズ
対物側最終レンズ、曇っている
これは下側から見た写真で、レンズの反対側からLEDライトで照らしています。
対物最終レンズを下側からもクリーニングしたのですが、曇りは取れませんでした。

▼対物最終レンズ
光軸合わせ機構
このレンズの曇りを取るには分解するしか無さそうです。でもここは光軸合わせの重要ポイントのようで、2本の調整ネジと板バネでレンズの位置が微調整出来るようになっています。ここを分解した場合、正確に元の場所に戻す、あるいは再調整する必要がありそうです。実体顕微鏡なので2軸間の位置関係の調整も必要なので難易度は高そうです。

▼レンズの曇り
レンズの曇り(バルサム切れ、変色)
問題のレンズです。光の当て方を工夫して曇りの様子を写真に撮りました。全面均等ではなく同心円状に汚れの濃淡があります。

外部からいくらクリーニングしても汚れが取れないので、レンズの貼り合わせ面に問題がある感じです。これ、たぶんバルサム切れという現象だと思います。バルサムが劣化して黄色くなると共に少し剥離があるようです。

このレンズは凸と凹のレンズを組み合わせることで、色消しになっているのだと思います。

この修理は難易度が高いので、今回は手を付けないでこのままにしておくことにしました。

▼分解した様子
分解した状態
全パーツの集合写真です。

▼正立プリズム
正立プリズム
特に問題は無いのですが、せっかくなのでカバーを外して内部を見ておきました。

反射ミラー(ポロミラー)で正立像を作る顕微鏡もあるようですが、この顕微鏡はちゃんとプリズム(ポロプリズム)が使われていました。プリズムの位置は精密に調整・固定されているのでこれ以上触らないでおきます。

▼クリーニングに使った資材
清掃用具
工具は別にして、このような物を使いました。左手前のアトマイザーにはエタノールを入れています。

無水エタノールは各種の清掃以外に、ガラス面の精密拭き上げの時に使うと便利です。エタノールを浸み込ませたワイプを一方向にゆっくりと動かすと、液の表面を引きずる形で乾燥が進みますが、境界部では不純物は液側に移動して表面に残らないのでコンタミの少ない仕上げが出来ます。レンズなど円形の場合は中心から周辺へ回転させながら拭き広げていって、不純物を最外周に集めるようにするとうまくいきます。水分の入ったアルコールを使うと水滴が残ってしまうのでうまくいきません。できればこういう時こはアセトンを使いたいのですが、ちょっと危険なので私は持ってません。

◆まとめ
壊してしまうと元も子もなくなるので緊張して作業を進めたのですが、ほぼ問題無く進めることが出来て良かったです。

顕微鏡のネジにはネジロックが使われているようで、簡単にはネジが緩まないようになっていました。正しい工具を使い、特にプラスのネジは強く押し付けながら回さないと、ネジの頭をナメてしまいます。
そういう注意をしながら作業を行ったのですが、ネジの(G)は堅く締まっていたのでプラスのドライバーでは緩みそうにありませんでした。そこで、バイスプライヤーでネジの頭を咥えて緩めるような手を使いました。

懸案の一つだったレンズの曇りは、原因がバルサム切れだったことまで判ったのですが、残念ながら修理出来ませんでした。接着剤などを準備しておけばなんとかなりそうな気がするので、機会があればまた挑戦してみたいと思います。

ちなみに、写真を撮った時にコントラストが悪いのが一番目立った問題なのですが、これは画像処理ソフトで補正すれば済むので、とりあえずは大丈夫です。

2020年1月1日の星空、ベテルギウスを撮影

あけましておめでとうございます。

さて、何かお正月らしい記事を書きたかったのですが、仕込んだネタはありません。そんな中、昨晩は雲一つない星空だったので星野写真を撮っておきました。なお、自宅ベランダからの撮影で、時刻は日付が(年が)変わった頃です。

▼シリウスからすばる (クリックで別窓にもう少し大きな写真)
シリウス、オリオン座、アルデバラン、すばる
EOS-70D, EFS 17-85, 17mm(35mm換算:27.3mm), ISO1600, f/4, 4秒
JPEGで撮ってリサイズしただけです。もう少しはっきりと撮れたら良いのですが、露出を増やすと背景が白くなってくるのでこれくらいが限界でした。画像処理かければもう少し良くなるのですが、とりあえず撮ったままです。

シリウス、オリオン座、アルデバラン、すばる
ベテルギウスがアルデバランより暗くなっているかも知れません。

▼オリオン座 (クリックで別窓にもう少し大きな写真)
オリオン座
EOS-70D, EFS 17-85, 28mm(35mm換算:41.5mm), ISO1600, f/4.5, 4秒 (リサイズしただけでJPEGで撮ったまま)

オリオン座

この写真を撮った理由をお察しの方も多いと思いますが、ベテルギウスを撮っておきたかったからです。ベテルギウスは2019年の10月頃から急に減光していて、超新星爆発が近いかもと言われています。まあ近いといっても、天文学の時間軸で近いという話なので、100年後なのかも知れません。ともかくこうやって記録しておいて、来年の正月に比較してみるのも一興かと思います。

◆まとめ
ベテルギウスの超新星爆発はいつ起きるんでしょうね。赤かった星が急に青白く猛烈な明るさになる訳で、さぞかし見応えがあることでしょう。地球の夜空に見える位置にある時にそういうことが起きると最高なのですが、どうなるでしょう。地球からベテルギウスまでの距離は約600光年なので、すでにその答えは出ているはずなのですが、地球上にいる我々には判らないというのが面白いです。

今日はセファイド変光星に関する大発見をした、リーヴィットの誕生日だった

 簡易分光器を作ってフラウンホーファー線の観察などをやっているので、個人的に天文に対する関心度が上がっています。そんなこともあって、宇宙の大きさを人類がどうやって把握していったのか、という話などを振り返ったりしています。ちなみに、こういう話では分光器が重要な役割を果たしています。

 ところで、宇宙の大きさについて、ハッブルの法則の発見に至るまでの経緯はおよそ把握していたつもりなのですが、一番はっきりしないのはセファイド変光星のあたりの話です。ハッブルはセファイド変光星を使って大きな発見をしたのですが、私自身がセファイド変光星についてきちんと理解出来ていません。初心者向けの資料には「セファイド変光星という目印を使うことで、距離を知る事が出来ました」とだけ書いてあったりして、どんな物理現象なのかさっぱり判っていませんでした。

 ということで調べてみると、ヘンリエッタ・スワン・リーヴィットという女性が決定的な役割を果たしていました。図書館に伝記があったので借りてきました

▼リーヴィットの伝記
リービッド「宇宙を測る方法」
 リーヴィット 宇宙を測る方法、ジョージ ジョンソン著、渡辺 伸監修、槇原 凛訳、WAVE出版
 ISBN978-4-87290-321-3

 この本に書いてありますが、リーヴィットに関して残されている記録はとても少ないようです。

 そんな背景からだと思われますが、リーヴィットについてWikiに書いてある情報も凄く少ないのですが、実はリーヴィットが生まれたのは1868年7月4日、つまり奇しくも148年前の今日だったということを先ほど知りました。
 
 伝記に掲載されていた写真

▼ハーバード大学の当時の天体望遠鏡
ハーバード大学の望遠鏡

▼リーヴィット
ヘンリエッタ・スワン・リービッド

 リーヴィットの発見は、小マゼラン星雲の中のセファイド変光星において、その変光周期と明るさに相関関係があることを見い出したことです。明るい星ほど変光周期が長いという結果でした。地球から小マゼラン星雲内のこれらの星までの距離はほとんど同じはずなので、変光周期はその星の絶対等級を反映していることになります。

 とは言っても小マゼラン星雲までの距離は不明なので、正確な絶対等級はこの時点では判りませんでした。その後の別の天文学者により、一つのセファイド変光星までの距離が判明しました。こうなるといもづる式に他の星までの距離が判るようになり、天体までの距離が判り、ハッブルの発見に繋がっていったということのようです。

 このあたりの話は、「物理の窓」の 「星までの距離を測る」に丁寧な解説があるので、興味のある方は一読されると良いと思います。なお、この資料にも書いてありますが、セファイド変光星自体は、リーヴィットが生まれる80年くらい前の、1780年代にピゴットとグッドリックによって発見されています。

◆最後に
 リーヴィットに関する資料を読むと、女性の社会的な地位が低かった時代にもかかわらず、着実に研究を行い、大発見に繋げた観察眼と洞察力はすごいと思いました。くしくも今日が彼女の誕生日だそうです。地球の裏側から勝手にひっそりと、お祝い申し上げます。ちなみに2018年は生誕150周年になるはずですが、何か記念行事でもやらないのでしょうか。

【追記】
・最初に公開した時は、リービットと書きましたが、伝記の本の表記に合わせリーヴィットに修正しました。
・この記事ではセファイド変光星と書いていますが、セフェイド変光星、あるいはケフェイド変光星、ケファイド変光星とも読まれるようです。
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