液晶の熱圧着コネクタの修理 (オムロン体重計 HBF-361)
体重計の液晶表示がおかしくなったので修理してみました。
▼オムロン HBF-361

ハンドル分離式で、手足から体脂肪率を測定するタイプです。
▼表示部

何も載っていない状態です。0.7と表示されていますが、0.0と表示されるのが正常です(0.0kgの意味)。つまり表示にセグメント抜けが発生しています。上の桁などにもセグメント抜けがあり、どうも一部の配線が断線しているようです。ケースに力を加えるとセグメント抜けの状態が変わるので、不良の原因は接触不良のような気がしました。
▼内部

ハンドル型の表示機の内部です。左右の銀色の部分は体脂肪率測定用の電極です。
この写真の裏側にある液晶にはカーボンフレキを使って接続されています。症状から考えるとこの部分の断線の可能性が高いと思われます。なお、この写真では判り難いですが、フレキのケーブルが長いので、余長部は基板の下にくしゃくしゃにして折り込まれていました。後で判ったのですが、これが諸悪の根源だったようです。
この状態で動作させながらプリント基板とフレキの熱圧着部を押してみましたが症状に変化はありません。ということはケーブル自体の断線、もしくは反対側の液晶との接続部が怪しくなります。
▼裏から光を当ててケーブル断線が無いか確認

右端から 2, 3, 4番目のカーボン線が明らかに断線しています。写真の赤丸内です。たぶんその付近もダメなんでしょう。
▼ケーブルの断線部をカットして再圧着

圧着は、はんだコテの温度を140℃くらいに下げ(トライアックの調節器を使っています)、コテ先を圧着部に押し当てて順に少しずつ圧着しました。専用の圧着工具が売られていますが、温度と手加減を誤らなければこの方法で結構いけます。
この作業ではコテ先の温度調節が重要です。フレキのベースフィルムが溶ける温度にするのは論外ですが、共晶はんだ(Sn 63%)の融点である183度以下で、ホットボンドが楽に溶ける程度の温度に調整するのが良いと思います。なお、熱電対温度計を使えば確実です。
これで直ったと思ったら、まだ少し表示が変です。どうも反対側の液晶との接続部のケーブルにもクラックが入っているようです。
▼実体顕微鏡で断線を探す

裏側にLEDライトを突っ込み、実体顕微鏡で導体のシルエットを見て調べます。
すると、液晶との接続部の少し先、複数の導体にクラックを発見しました。フレキのケーブルが乱暴に折り畳まれていたために、フィルムにシワが入り、その部分の応力が大きくなってカーボン導体の断線に至ったようです。
MADE IN CHAINAと書いてありますが、作業員への指導が悪かったのでしょうか。状況から想像するには、余分なケーブルは基板の下に押し込むように作業指示が行われていた気がします。カーボンフレキは応力に弱いのでシャープに曲げるのは厳禁。丁寧に押し込まないといけないのですが、そういう注意無しで作業が行われていた気がします。そもそも、大きく余長が出るのは設計不良とも言えますが、実際のところどうなんでしょうね。
ネットを検索すると、オムロンの体重計の液晶の表示不具合の発生頻度は高いようで、同じような症状で困っている(怒っている)人が多いように感じました。
幸い?ケーブルの長さにはまだ余裕があるので、長さを切り詰めて液晶側の接合も修理することにしました。
▼液晶の接合部をクリーニング

ケーブルを剥がし、ガラスの上に残ったフレキケーブルの接着剤をクリーニングします。この写真はクリーニング中です。完全にクリーニングすると透明電極だけ残りますが、とても見づらくなります。
私自身、ここまでやるのは初めてです。 実は電子機器 Junkerさんの下記の記事が大変参考になってここまで修理しました。
「オムロン体重体組成計 HBF-201 液晶修理」 ハード改造・修理
液晶の透明電極はすごく壊れやすいものだと思っていました。でも実際にはかなり丈夫で、爪楊枝でこすったくらいではなんともありませんでした。まあよく考えると、ある程度の強度が無いと製造プロセスを安全に通すことは出来ないので、あたりまえのことなんでしょう。
接着剤などを完全にクリーニングすると電極の位置が判り難くなります。でも幸いなことに、封止樹脂?部に電極の位置を示す黒いマーキングがあったので、これを目印にケーブルを位置合わせすることが出来ました。
▼液晶側のケーブルの熱圧着

相互の位置がズレないようにするため、適当なプラ板にテープで固定して作業を行います。なお、フレキケーブル裏面の保護フィルムは剥がしておきます。
熱圧着の方法は基板側と同じです。圧着が済んだら裏面の保護テープを元通りに貼っておきます。
▼切り落としたケーブル

両側を切り落としたので二つあります。
▼組立て

ケーブルにはもう一回接続作業が出来るくらいの余長があります。修理前は長い余長がしわくちゃになって基板の下に押し込まれていました。
これで修理完了。体重計は正常に動くようになりました。
手に負えないと思っていたヒートシールケーブルの修理もやってみると意外と簡単で、そのノウハウが判ったのが最大の収穫です。
▼修理している間に後継機を購入

うちの家族は毎日体重計を使っているので、これが無いと困るんです。もう修理不能と思えたので、新しい体重計(オムロン HBF-254C)を買っちゃいました。上の写真の右側です。新しい体重計はiPhoneなどに測定結果を飛ばすことが出来るのでとても便利です。
実は新しいのを買ったその日の夜に修理成功となりました。左が修理完了した体重計、右が新型です。体重計が二台あってもしょうがないのですが、私の作業部屋にでも置いておいて、物の重さなどを測るのに使いましょう。
それと、この体重計を修理して判った衝撃の事実があります。
この体重計では使用者の年齢をあらかじめ入力しておいて、標準的な人と比較する機能が付いています。つまり、「あなたはこの年齢の標準的な人より体脂肪率がx%高い」などの表示です。この判断で重要なのは年齢の値です。私は体重計のなかに時計が入っていて、年齢を自動的に加算するものと思っていました。
しかし、実際にはそんな加算は行われておらず、最初に設定した年齢がそのまま使われていました。つまり何年経っても最初に設定した年代のモデルと比較されていたわけです。この状態で7年くらい使っていたんだから、何だかなーという感じです。
たぶん取り説には誕生日毎に年齢の設定を変更するように書いてあるのでしょうが、全く気付きませんでした。まあ、体重計が吐き出す同一年齢の標準値との比較結果なんて、私を含めてあまり気にしている人はいないんでしょう。ま、いいか。
ということで体重計を修理した話はおしまいです。後になって思ったのですが、これって手を動かせばそれだけ技術が身に付き、知識も増えるということだと思います。手間を惜しんではいけないですね。
▼オムロン HBF-361

ハンドル分離式で、手足から体脂肪率を測定するタイプです。
▼表示部

何も載っていない状態です。0.7と表示されていますが、0.0と表示されるのが正常です(0.0kgの意味)。つまり表示にセグメント抜けが発生しています。上の桁などにもセグメント抜けがあり、どうも一部の配線が断線しているようです。ケースに力を加えるとセグメント抜けの状態が変わるので、不良の原因は接触不良のような気がしました。
▼内部

ハンドル型の表示機の内部です。左右の銀色の部分は体脂肪率測定用の電極です。
この写真の裏側にある液晶にはカーボンフレキを使って接続されています。症状から考えるとこの部分の断線の可能性が高いと思われます。なお、この写真では判り難いですが、フレキのケーブルが長いので、余長部は基板の下にくしゃくしゃにして折り込まれていました。後で判ったのですが、これが諸悪の根源だったようです。
この状態で動作させながらプリント基板とフレキの熱圧着部を押してみましたが症状に変化はありません。ということはケーブル自体の断線、もしくは反対側の液晶との接続部が怪しくなります。
▼裏から光を当ててケーブル断線が無いか確認

右端から 2, 3, 4番目のカーボン線が明らかに断線しています。写真の赤丸内です。たぶんその付近もダメなんでしょう。
▼ケーブルの断線部をカットして再圧着

圧着は、はんだコテの温度を140℃くらいに下げ(トライアックの調節器を使っています)、コテ先を圧着部に押し当てて順に少しずつ圧着しました。専用の圧着工具が売られていますが、温度と手加減を誤らなければこの方法で結構いけます。
この作業ではコテ先の温度調節が重要です。フレキのベースフィルムが溶ける温度にするのは論外ですが、共晶はんだ(Sn 63%)の融点である183度以下で、ホットボンドが楽に溶ける程度の温度に調整するのが良いと思います。なお、熱電対温度計を使えば確実です。
これで直ったと思ったら、まだ少し表示が変です。どうも反対側の液晶との接続部のケーブルにもクラックが入っているようです。
▼実体顕微鏡で断線を探す

裏側にLEDライトを突っ込み、実体顕微鏡で導体のシルエットを見て調べます。
すると、液晶との接続部の少し先、複数の導体にクラックを発見しました。フレキのケーブルが乱暴に折り畳まれていたために、フィルムにシワが入り、その部分の応力が大きくなってカーボン導体の断線に至ったようです。
MADE IN CHAINAと書いてありますが、作業員への指導が悪かったのでしょうか。状況から想像するには、余分なケーブルは基板の下に押し込むように作業指示が行われていた気がします。カーボンフレキは応力に弱いのでシャープに曲げるのは厳禁。丁寧に押し込まないといけないのですが、そういう注意無しで作業が行われていた気がします。そもそも、大きく余長が出るのは設計不良とも言えますが、実際のところどうなんでしょうね。
ネットを検索すると、オムロンの体重計の液晶の表示不具合の発生頻度は高いようで、同じような症状で困っている(怒っている)人が多いように感じました。
幸い?ケーブルの長さにはまだ余裕があるので、長さを切り詰めて液晶側の接合も修理することにしました。
▼液晶の接合部をクリーニング

ケーブルを剥がし、ガラスの上に残ったフレキケーブルの接着剤をクリーニングします。この写真はクリーニング中です。完全にクリーニングすると透明電極だけ残りますが、とても見づらくなります。
私自身、ここまでやるのは初めてです。 実は電子機器 Junkerさんの下記の記事が大変参考になってここまで修理しました。
「オムロン体重体組成計 HBF-201 液晶修理」 ハード改造・修理
液晶の透明電極はすごく壊れやすいものだと思っていました。でも実際にはかなり丈夫で、爪楊枝でこすったくらいではなんともありませんでした。まあよく考えると、ある程度の強度が無いと製造プロセスを安全に通すことは出来ないので、あたりまえのことなんでしょう。
接着剤などを完全にクリーニングすると電極の位置が判り難くなります。でも幸いなことに、封止樹脂?部に電極の位置を示す黒いマーキングがあったので、これを目印にケーブルを位置合わせすることが出来ました。
▼液晶側のケーブルの熱圧着

相互の位置がズレないようにするため、適当なプラ板にテープで固定して作業を行います。なお、フレキケーブル裏面の保護フィルムは剥がしておきます。
熱圧着の方法は基板側と同じです。圧着が済んだら裏面の保護テープを元通りに貼っておきます。
▼切り落としたケーブル

両側を切り落としたので二つあります。
▼組立て

ケーブルにはもう一回接続作業が出来るくらいの余長があります。修理前は長い余長がしわくちゃになって基板の下に押し込まれていました。
これで修理完了。体重計は正常に動くようになりました。
手に負えないと思っていたヒートシールケーブルの修理もやってみると意外と簡単で、そのノウハウが判ったのが最大の収穫です。
▼修理している間に後継機を購入

うちの家族は毎日体重計を使っているので、これが無いと困るんです。もう修理不能と思えたので、新しい体重計(オムロン HBF-254C)を買っちゃいました。上の写真の右側です。新しい体重計はiPhoneなどに測定結果を飛ばすことが出来るのでとても便利です。
実は新しいのを買ったその日の夜に修理成功となりました。左が修理完了した体重計、右が新型です。体重計が二台あってもしょうがないのですが、私の作業部屋にでも置いておいて、物の重さなどを測るのに使いましょう。
それと、この体重計を修理して判った衝撃の事実があります。
この体重計では使用者の年齢をあらかじめ入力しておいて、標準的な人と比較する機能が付いています。つまり、「あなたはこの年齢の標準的な人より体脂肪率がx%高い」などの表示です。この判断で重要なのは年齢の値です。私は体重計のなかに時計が入っていて、年齢を自動的に加算するものと思っていました。
しかし、実際にはそんな加算は行われておらず、最初に設定した年齢がそのまま使われていました。つまり何年経っても最初に設定した年代のモデルと比較されていたわけです。この状態で7年くらい使っていたんだから、何だかなーという感じです。
たぶん取り説には誕生日毎に年齢の設定を変更するように書いてあるのでしょうが、全く気付きませんでした。まあ、体重計が吐き出す同一年齢の標準値との比較結果なんて、私を含めてあまり気にしている人はいないんでしょう。ま、いいか。
ということで体重計を修理した話はおしまいです。後になって思ったのですが、これって手を動かせばそれだけ技術が身に付き、知識も増えるということだと思います。手間を惜しんではいけないですね。