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格安デジタルオシロ DSO-SHELL (DSO150) のレビュー(内部回路調査編)

 格安デジタルオシロDSO-Shell(DSO150)のレビュー記事もおそらく最後、今回は回路の動作を調べてみます。

1.まえがき
▼DSO-SHELL(DSO150)
内部回路解析

 調査のためにケースを開け、測定器に接続して波形などを調べます。

▼使った測定器
使用測定器
 左上のファンクションジェネレーター (FG, HP3314A) から信号を入れ、アナログオシロ(テクトロ2465B)で状態を見ました。

2.アナログ部波形観察
 波形はいろいろ見たのですが、ADコンバーターへの入力信号とトリガ信号の波形が面白いので紹介します。なお、観察場所は下記回路図の V4 (TP5)と V6(TP7) です。

 あと、DSO Shell(DSO150)の回路図はJYE Tech のサイトで公開されています。この記事に出てくる回路図は公開されている回路図から一部を抜粋したものです。

▼ADCINとTRG回路
トリガ、ADCIN
 これはアナログ回路の末端部分で、この先(右側)はCPUに接続されています。V4はCPUのADコンバーターへのアナログ入力信号。V6はトリガ信号でロジック信号として使われています。

 なお、話はちょっと飛びますが、トリガの信号レベルは可変になっていますが、その値は回路図の右下のTL_PWMから入力されています。このPWMの周波数は約57kHzでした。この信号をR20とC6で平滑してコンパレーターレファレンスにしています。R20とC8の時定数は10msありPWM周期に対して十分長いので、リップルの心配はほぼ無いと思います。配線からの飛び込みがあれば話は別です。

▼入力周波数10kHz、矩形波の場合
10kHz矩形波
 波形は上から、FG出力、アナログ出力(V4),トリガ出力(V6)です。(以下同様)

 入力に対してアナログ出力(V4)の立ち上がりが、なまっています。使っているオペアンプの性能から、これは仕方がないと思います。いちばん下のトリガ信号波形はもっとなまっています。

▼入力周波数10kHz、三角波の場合
100kHz三角波
 三角波は遷移速度が遅いので一番下のコンパレーター出力波形の立ち上がり速度がかなり遅くなっています。DSO-Shellは周波数が高くなるとトリガのタイミング精度が悪くなりますが、このあたりの特性が影響しているのだと思います。もちろん最終的にはCPUでトリガを検出するので、その処理速度の影響もあるはずです。

▼入力周波数200kHz、矩形波の場合
200kHz
 この周波数ではトリガ信号がGNDレベルまで下がっておらず、波形タイミングが検出出来ていません。オペアンプを(ヒステリシス)コンパレーターとして使っているので、速度的に苦しいのでしょう。ここに本職のコンパレーターを使えばもっと早くなるのでしょうが、コストの点からそんな贅沢はやってられないのだと思います。

 ちなみにこの状態で NORMALトリガモードにすると波形が掃引されませんでした。CPUにトリガ信号が来ないので当然の結果でしょう。それと、この200kHzという周波数はDSO-Shellのアナログ帯域として仕様に書かれている値ですが、「アナログ部分だけならこの周波数までは動く」 くらいの意味に思った方がいいと思います。オシロとしてまともに使えるのは100kHzくらいまでです。

3.その他
 以下、波形以外に気付いた点です。

▼キャリブレーション信号回路
キャリブレーション出力回路

 J8にキャリブレーション用の3.3Vと0.1Vが出ますが、現在のファームでは0.1Vの出力に3.3Vのオフセットが入っちゃってます。(なお、現物ではR16の1kΩには810Ωが、R31の470Ωには220Ωが実装されていました) AMPSELを本来はLOWにすべきところを間違ってHIGHにしてしまったのでオフセットがかかったのだと思います。ちなみに、電圧は相手のポートとの綱引きで決まるので、ぴったり0.1Vの振幅が出るように設計するのは面倒です。

▼マイナス電源の動作周波数
 オペアンプのAV- を作るためにチャージポンプ式の電源コンバーター(ICL7660)が使われていますが、この動作周波数は約3.5kHzでした。覚えておけば何かノイズの問題が出た時に役立つかも知れません。

▼液晶画面からのノイズ
 液晶画面にプローブを近づけるとノイズが出ていることが判ります。
液晶画面からの輻射ノイズ
 (表示されている波形は液晶画面ノイズではありません)

 DSO-Shellで自分で確認できますが、せっかくなので別のオシロで観察
液晶からのノイズ
 約15khzのノイズが出ています。これは描画のためのクロック周波数だと思いますが、液晶画面にハイインピーダンスな配線が接近するとこのノイズが乗るので要注意です。

▼シリアル端子
ピンヘッダのパターンまでTXとRXが配線されており、オシロで見ると起動時にデーターが流れていたので、シリアルコンバーターを接続して Windows の TeraTermで見てみました。
・シリアル端子のデーター
校正用信号回路
 ビットレートは38400bpsで、起動時にメーカー名とファームのバージョンを示すと思われるデーターが流れていました。試しにRX端子に適当な文字データーを送ってみましたが無反応でした。まあこれは当然か。
 なお、シリアルのピンはファームのアップデートの時に使うのでピンヘッダをはんだ付けしておきました。

▼入力アンプの切り替え
1/1.1倍と、1/110倍の入力アンプがありアナログスイッチで切り替えられています。この切り替えは、5mVから0.2Vレンジまでは1/1.1倍のアンプ(U1A)、0.5V~20Vレンジは 1/110倍(U1B)が使われていました。

▼EEPROM
波形データーの保存先はI2CのEEPROMです。この波形を見たかったのですが腕が悪くて失敗しました。きちっと配線を出して観察しないとダメです。ちなみにこのEEPROMは型番のマーキングが無いので仕様が判りません。

4.最後に
・帯域が100kHzと狭いし、使用上の注意点もありますが、コンパクトにまとまっていてこの値段なので大満足です。

・こういう電気的にクローズしている測定器を電池で使えば、測定ノードのポテンシャルを気にしないでいいので便利です。例えば、AC100Vの電位で動いているマイコンとかは、普通のオシロでは触り難いですが、このオシロなら大丈夫です。

・DSO Shellフォーラムでの中の人の書き込みによると、「今後ファームのアップデートがある」、「プログラムのソースは公開される」ということです。ソースが公開されればボランティアによる機能拡張があるかもしれません。とりあえずあると嬉しいのは波形のPCへの保存とFFTですが、期待して待ってましょう。

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