首都大学の光の塔の日時計とアナレンマ
夏至まであと3日となりました。明るさセンサーを使ってアナレンマを描く試みは春分の日の頃に中間結果を記事にしましたが、そろそろ中間点を迎えることになります。ところで、アナレンマでネットを検索すると、南大沢の首都大学に日時計があって、その文字盤にアナレンマが描いてあることが判りました。
南大沢は買い物で時々行くので、実際に見てみたいものだと思って、チャンスを伺っていたのですが、先日ようやく日時計の写真を撮ることが出来ました。これまでに何度か現地に行く機会はあったのですが、曇りの日ばかりでした。何しろ日時計なので太陽が出ていないと意味がありません。
場所は南大沢の首都大学で、隣接する三井アウトレットパーク南大沢に接する門の入口の横の光の塔という建物です。
▼場所、google mapより転載 google map でこの場所を表示
この写真の黒い正方形の屋根が光の塔です。道路を挟んで下側がアウトレットです。
▼光の塔
三角屋根の建物が光の塔です。上空を輸送機がよく通過しますが、地図を見るとこの場所は横田基地の滑走路の延長線上でした。
▼光の塔全景
日時計は光の塔の、南東面と南西面の二か所に設置されています。地図を見ると建物の方向がよく判ると思います。
▼日時計(南西面)
日が当たっている状態の日時計です。太陽の絵の額から右下に突き出している黒い棒が日時計の影を作る棒 (Gnomon) です。影は、そこからほぼ下向きに伸びて、日時計の目盛りの12時35分あたりを指しています。
目盛り板には冬至、春分秋分、夏至の影の長さを示す線が記入されています。この写真を撮ったのは6月12日で夏至に近いので、影の先端は夏至の曲線にほぼ一致した位置にあります。
ところで、この写真を撮った時刻は12時14分ですが、日時計は12時35分あたりを示しています。つまりこの日時計は約20分進んでいます。この理由を調べてみると、以下のページに詳しく解説されていました。
・ 首都大学東京 光の塔の謎 南大沢季節便りさん
・ こんな作業もします 須藤オルガン工房さん
詳しくは上のリンク先の説明を読んで頂くのが良いのですが、かいつまんで書くと、この日時計は設置場所、つまり南大沢時刻(視太陽時)を表示するように作られているので、日本標準時と比べると19分程度進んでいる。ということだそうです。
あと、これ以外の誤差の要因として均時差によるズレがあります。ただ幸いなことに、この写真は夏至に近い日に撮ったので、均時差によるズレはほぼゼロと考えても大丈夫です。なお、均時差は日時計を語る時に大事なことなので、後で触れたいと思います。
◆アナレンマの8の字
上の写真を見るとアナレンマの8の字を示す金具が取り付けられています。実は日時計を見たかった最大の理由は、この8の字を実際に見てみたかったからです。
アナレンマの8の字は均時差を表すために付けられるのですが、この日時計に付けられている8の字は、ちょっとしっくりときませんでした。その理由は、
1.アナレンマの8の字が12時では無く少し進んだ位置に置かれています。この理由はなぜ?
2.アナレンマの8の字の丸の面積は、冬至側の方が大いはずなのにこの日時計では差がほとんど無い。なぜ?
こういう疑問があったのですが、
1.項は普通の時計(つまり平均太陽時)で正午の影の位置を表しているので、この位置にアナレンマの8の字を書くのだそうです。なるほで、そう言われれば確かにそうです。でも日時計を読むのに、なぜ普通の時計が必要になるのでしょう。ここが最初は全く理解出来ませんでした。だって普通の時計があれば日時計なんて最初からいりません。
こうなっている理由は、光の塔の中に正午の太陽のアナレンマを見る仕掛けがあることに関係がありそうです(上のリンク先参照)。光の塔の中でやっているのと同じことを、日時計でも表現するためにこういう目盛りを付けた、と考えるのが自然では無いかと思います。このあたり、もし勘違いや説明が不正確な所がありましたら指摘していただくと幸いです。
2.項の理由は簡単でした。壁面に影を投影しているので、太陽高度が高くなると影がどんどん伸びて、テコの原理でアナレンマが拡大されることを忘れていました。
▼南東面の日時計と太陽光の取り入れ口
南東面には午前用の日時計があります。こちらは街路樹が大きくなって見づらくなっているのが残念です。二つの日時計の棒 (Gnomon) の根元は、どちらも建物を貫いて北極星の方向を向いているはずです。
この写真の二つの日時計の間に縦長のガラス窓があり、その窓の中に丸い穴が開いているのが見えます。実は、ここから塔の内部に光を導き、太陽の正午のアナレンマが観察出来るようになっているのだそうです。何とも大規模な仕掛けです。これは一度見てみたいものですが、勝手に建物の中に入る訳にはいかないでしょうからどうしたもんでしょう。門のところの守衛さんに断ればいいのでしょうか。
◆まとめ
思いもしなかった近くにアナレンマを見ることが出来る施設がありました。せっかくこういう施設があるのに、あまり知られてないのはもったいないと思います。これ、自然科学の教材としてとても優れていると思います。
アナレンマや均時差の話は難しすぎますが、季節による太陽の影の軌跡の変化は、中学校の入試問題に出てきます。南大沢のアウトレットに行った時には、子供にこの日時計を見せることをお勧めします。きっと良い勉強になるはずです。
【2017/6/21追記】
日時計に描かれた8の字のアナレンマの図形の使い方に関して勘違いがあったので追記します。記事中で「普通の時計が必要」と書いてしまいましたが、これは間違いでした。影の先端がアナレンマの8の字の線と一致した時が、普通の時計の正午です。つまり時計を見なくても日本標準時の正午を知ることが出来ます。
とは言っても時計があれば、本当にそうなっていることを自分で確認出来るので、やはり時計を見ることをお勧めします。現象を確認することは、科学の重要なステップです。
、
なお、針の影はアナレンマの8の字を横から通過するので、8の字の線を2回横切ります。このどちらのタイミングを採用すべきかは、季節により変わります。
南大沢は買い物で時々行くので、実際に見てみたいものだと思って、チャンスを伺っていたのですが、先日ようやく日時計の写真を撮ることが出来ました。これまでに何度か現地に行く機会はあったのですが、曇りの日ばかりでした。何しろ日時計なので太陽が出ていないと意味がありません。
場所は南大沢の首都大学で、隣接する三井アウトレットパーク南大沢に接する門の入口の横の光の塔という建物です。
▼場所、google mapより転載 google map でこの場所を表示
この写真の黒い正方形の屋根が光の塔です。道路を挟んで下側がアウトレットです。
▼光の塔
三角屋根の建物が光の塔です。上空を輸送機がよく通過しますが、地図を見るとこの場所は横田基地の滑走路の延長線上でした。
▼光の塔全景
日時計は光の塔の、南東面と南西面の二か所に設置されています。地図を見ると建物の方向がよく判ると思います。
▼日時計(南西面)
日が当たっている状態の日時計です。太陽の絵の額から右下に突き出している黒い棒が日時計の影を作る棒 (Gnomon) です。影は、そこからほぼ下向きに伸びて、日時計の目盛りの12時35分あたりを指しています。
目盛り板には冬至、春分秋分、夏至の影の長さを示す線が記入されています。この写真を撮ったのは6月12日で夏至に近いので、影の先端は夏至の曲線にほぼ一致した位置にあります。
ところで、この写真を撮った時刻は12時14分ですが、日時計は12時35分あたりを示しています。つまりこの日時計は約20分進んでいます。この理由を調べてみると、以下のページに詳しく解説されていました。
・ 首都大学東京 光の塔の謎 南大沢季節便りさん
・ こんな作業もします 須藤オルガン工房さん
詳しくは上のリンク先の説明を読んで頂くのが良いのですが、かいつまんで書くと、この日時計は設置場所、つまり南大沢時刻(視太陽時)を表示するように作られているので、日本標準時と比べると19分程度進んでいる。ということだそうです。
あと、これ以外の誤差の要因として均時差によるズレがあります。ただ幸いなことに、この写真は夏至に近い日に撮ったので、均時差によるズレはほぼゼロと考えても大丈夫です。なお、均時差は日時計を語る時に大事なことなので、後で触れたいと思います。
◆アナレンマの8の字
上の写真を見るとアナレンマの8の字を示す金具が取り付けられています。実は日時計を見たかった最大の理由は、この8の字を実際に見てみたかったからです。
アナレンマの8の字は均時差を表すために付けられるのですが、この日時計に付けられている8の字は、ちょっとしっくりときませんでした。その理由は、
1.アナレンマの8の字が12時では無く少し進んだ位置に置かれています。この理由はなぜ?
2.アナレンマの8の字の丸の面積は、冬至側の方が大いはずなのにこの日時計では差がほとんど無い。なぜ?
こういう疑問があったのですが、
1.項は普通の時計(つまり平均太陽時)で正午の影の位置を表しているので、この位置にアナレンマの8の字を書くのだそうです。なるほで、そう言われれば確かにそうです。でも日時計を読むのに、なぜ普通の時計が必要になるのでしょう。ここが最初は全く理解出来ませんでした。だって普通の時計があれば日時計なんて最初からいりません。
こうなっている理由は、光の塔の中に正午の太陽のアナレンマを見る仕掛けがあることに関係がありそうです(上のリンク先参照)。光の塔の中でやっているのと同じことを、日時計でも表現するためにこういう目盛りを付けた、と考えるのが自然では無いかと思います。このあたり、もし勘違いや説明が不正確な所がありましたら指摘していただくと幸いです。
2.項の理由は簡単でした。壁面に影を投影しているので、太陽高度が高くなると影がどんどん伸びて、テコの原理でアナレンマが拡大されることを忘れていました。
▼南東面の日時計と太陽光の取り入れ口
南東面には午前用の日時計があります。こちらは街路樹が大きくなって見づらくなっているのが残念です。二つの日時計の棒 (Gnomon) の根元は、どちらも建物を貫いて北極星の方向を向いているはずです。
この写真の二つの日時計の間に縦長のガラス窓があり、その窓の中に丸い穴が開いているのが見えます。実は、ここから塔の内部に光を導き、太陽の正午のアナレンマが観察出来るようになっているのだそうです。何とも大規模な仕掛けです。これは一度見てみたいものですが、勝手に建物の中に入る訳にはいかないでしょうからどうしたもんでしょう。門のところの守衛さんに断ればいいのでしょうか。
◆まとめ
思いもしなかった近くにアナレンマを見ることが出来る施設がありました。せっかくこういう施設があるのに、あまり知られてないのはもったいないと思います。これ、自然科学の教材としてとても優れていると思います。
アナレンマや均時差の話は難しすぎますが、季節による太陽の影の軌跡の変化は、中学校の入試問題に出てきます。南大沢のアウトレットに行った時には、子供にこの日時計を見せることをお勧めします。きっと良い勉強になるはずです。
【2017/6/21追記】
日時計に描かれた8の字のアナレンマの図形の使い方に関して勘違いがあったので追記します。記事中で「普通の時計が必要」と書いてしまいましたが、これは間違いでした。影の先端がアナレンマの8の字の線と一致した時が、普通の時計の正午です。つまり時計を見なくても日本標準時の正午を知ることが出来ます。
とは言っても時計があれば、本当にそうなっていることを自分で確認出来るので、やはり時計を見ることをお勧めします。現象を確認することは、科学の重要なステップです。
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なお、針の影はアナレンマの8の字を横から通過するので、8の字の線を2回横切ります。このどちらのタイミングを採用すべきかは、季節により変わります。