キラウエア火山の噴火(2018年)状況、6月26日時点
ハワイ島のキラウエア火山の噴火につき、前回の記事以降の状況についてまとめておきます。なお、記載している時刻は現地時刻(HST)です。
▼5月31日、14:00時点の溶岩流の位置

これは前回の記事の最後に掲載したマップで、Flow Fronts 5/31 12:30PM と書かれているのが溶岩流の先頭位置です。
青い線が最急勾配ラインなので、流れは北と、東方向の二つの方向に分かれるのではないか、と思っていました。しかし、実際には全ての流れは東に進みました。途中の勾配の緩やかな場所では溶岩の進むスピードが落ちたりしたのですが、着実に東方向に進みました。
そして、カポホクレーターを過ぎたあたり、つまりR132とR137の交差点 (four corners) で流れは南東方向に曲がり、その先は傾斜が急なのでしょうか、溶岩流は速度を増して海へ向かい、Kapohoの町を飲み込んで、カポホ湾を完全に埋め尽くしてしまいました。
▼カポホ湾に到達した溶岩(6月4日)

USGSのウエブより転載。(https://volcanoes.usgs.gov/observatories/hvo/multimedia_uploads/multimediaFile-2170.jpg)
その後もF8から大量に供給される溶岩流は続き、現在では下図のようになっています。
▼6月26日、10:00時点の溶岩流

Kapohoの町の大部分と、Vacationland Hawaii が完全に溶岩に埋まってしまいました。Google map の航空写真を見ると、被災前の建物の様子を見ることが出来ますが、100軒以上の家や建物が失われています。また、ここは海が綺麗な場所で、”カポホ タイドプール”で検索するとその様子を見ることが出来ますが、今は全て溶岩の下になってしまいました。
もう一度溶岩流の動きを時系列に振り返ってみます。
・6月1日:21:50時点で溶岩流はカポホクレーターの北東エッジを回り込む。(forur corners の位置)
・6月2日:10:00に溶岩がカポホクレーター内にあるグリーンレイクに流れ込み、15:00には湖は溶岩で満たされた。つまり水が蒸発して無くなった。
・6月3日:溶岩流はカポホの町を進み、7:30時点で海まで430ヤード。
・6月4日:10:30時点で溶岩はカポホ湾に到達
・6月5日:6:30時点でカポホ湾は溶岩で埋め尽くされる
・6月6日:南側の Vacationland地域が溶岩で埋め尽くされる。(この時点でタイドプールが無くなったと思われる)
以降F8からの溶岩流は続き、海への流入ポイントは徐々に南に移動。溶岩の扇状地のような状態になり、海岸線の1.5km以上の幅が溶岩により覆われる状態になっています。
途中の溶岩流は自然に出来た溶岩の堤防に守られて、流路の位置は安定しているようです。たまに小規模の越流はあるものの、すぐに治まるようです。溶岩は冷えれば固まるので自己修復される仕組みになっているようです。
溶岩の噴出点となっているF8の周囲には、高さ55mくらいのコーンが出来ています。
◆キラウエア山頂の状況
上記のような、イーストリフトゾーンの割れ目噴火と溶岩流に目を奪われている間に、キラウエア山頂でも大きな変化が発生していました。それはハレマウマウ火口内の崩落発生です。何が起こっているかを正確に把握するためにはキラウエア山頂の構造(地形)を理解しておく必要があります。
▼キラウエア山頂の地図(図は、https://www.alohakumax.com/bigisland/kilauea.htmlより転載、加工)

これはキラウエア山頂の地図です。灰色で塗られた範囲がキラウエアカルデラで、このサイズは4kmくらいありますが、これをキラウエア火口と呼ぶことがあるので話が混乱します。(ちなみにこの地図もキラウエア火口と書いてあります)
キラウエアカルデラの中にハレマウマウクレーターがあって、ここはカルデラより一段陥没した地形になっています。さらにハレマウマウクレーターの中にオーバールッククレーターというほぼ円形の穴があり、そこには溶岩湖があります(ありました)。この地図の赤丸が溶岩湖の部分です。
今回崩落が起きているのは、大雑把にはこの地図で緑色の線で示した範囲です。(正確にはUSGSの資料をご覧ください) つまり、ハレマウマウクレーターの内部で、オーバールッククレーターを含む範囲が陥没しています。なお、赤丸は元の地図に書かれたものものですが、実際の位置間もう少し南西です。緑の線は私が追記したものです。
ニュースでは単にキラウエアの火口が陥没と報じていて、あたかもカルデラの火口壁を含む広い範囲が崩落した、と思わせるような表現になっていることがあるので困ります。
なお、ハレマウマウクレーター内の溶岩湖の溶岩は、イーストリフトゾーンの割れ目の方に移動したようで、見えなくなったのですが、更にこの付近の地面が大きく陥没しているので、地底のマグマ溜りが小さくなった、ということではないかと思います。
◆今後の予想など
F8 からの溶岩の流出がいつまで続くかが一番のポイントだと思います。何しろ、50kmも離れたキラウエア山頂の地形の変化まで関係した、大規模な現象なので、鎮静までには長い期間がかかるような気がします。
溶岩流が現在の位置のまま変化しなければ、海に落ちて行くだけなので、被災地域はこれ以上拡大しないで済みそうです。それにアメリカの国土が拡大する訳で、嬉しいことなんでしょう。でも、溶岩流の先で固まった溶岩が増えれば、その方向には流れ難くなるはずなので、突然別の方向に流れ始めないとも限りません。これは怖い話だと思います。
▼5月31日、14:00時点の溶岩流の位置

これは前回の記事の最後に掲載したマップで、Flow Fronts 5/31 12:30PM と書かれているのが溶岩流の先頭位置です。
青い線が最急勾配ラインなので、流れは北と、東方向の二つの方向に分かれるのではないか、と思っていました。しかし、実際には全ての流れは東に進みました。途中の勾配の緩やかな場所では溶岩の進むスピードが落ちたりしたのですが、着実に東方向に進みました。
そして、カポホクレーターを過ぎたあたり、つまりR132とR137の交差点 (four corners) で流れは南東方向に曲がり、その先は傾斜が急なのでしょうか、溶岩流は速度を増して海へ向かい、Kapohoの町を飲み込んで、カポホ湾を完全に埋め尽くしてしまいました。
▼カポホ湾に到達した溶岩(6月4日)

USGSのウエブより転載。(https://volcanoes.usgs.gov/observatories/hvo/multimedia_uploads/multimediaFile-2170.jpg)
その後もF8から大量に供給される溶岩流は続き、現在では下図のようになっています。
▼6月26日、10:00時点の溶岩流

Kapohoの町の大部分と、Vacationland Hawaii が完全に溶岩に埋まってしまいました。Google map の航空写真を見ると、被災前の建物の様子を見ることが出来ますが、100軒以上の家や建物が失われています。また、ここは海が綺麗な場所で、”カポホ タイドプール”で検索するとその様子を見ることが出来ますが、今は全て溶岩の下になってしまいました。
もう一度溶岩流の動きを時系列に振り返ってみます。
・6月1日:21:50時点で溶岩流はカポホクレーターの北東エッジを回り込む。(forur corners の位置)
・6月2日:10:00に溶岩がカポホクレーター内にあるグリーンレイクに流れ込み、15:00には湖は溶岩で満たされた。つまり水が蒸発して無くなった。
・6月3日:溶岩流はカポホの町を進み、7:30時点で海まで430ヤード。
・6月4日:10:30時点で溶岩はカポホ湾に到達
・6月5日:6:30時点でカポホ湾は溶岩で埋め尽くされる
・6月6日:南側の Vacationland地域が溶岩で埋め尽くされる。(この時点でタイドプールが無くなったと思われる)
以降F8からの溶岩流は続き、海への流入ポイントは徐々に南に移動。溶岩の扇状地のような状態になり、海岸線の1.5km以上の幅が溶岩により覆われる状態になっています。
途中の溶岩流は自然に出来た溶岩の堤防に守られて、流路の位置は安定しているようです。たまに小規模の越流はあるものの、すぐに治まるようです。溶岩は冷えれば固まるので自己修復される仕組みになっているようです。
溶岩の噴出点となっているF8の周囲には、高さ55mくらいのコーンが出来ています。
◆キラウエア山頂の状況
上記のような、イーストリフトゾーンの割れ目噴火と溶岩流に目を奪われている間に、キラウエア山頂でも大きな変化が発生していました。それはハレマウマウ火口内の崩落発生です。何が起こっているかを正確に把握するためにはキラウエア山頂の構造(地形)を理解しておく必要があります。
▼キラウエア山頂の地図(図は、https://www.alohakumax.com/bigisland/kilauea.htmlより転載、加工)

これはキラウエア山頂の地図です。灰色で塗られた範囲がキラウエアカルデラで、このサイズは4kmくらいありますが、これをキラウエア火口と呼ぶことがあるので話が混乱します。(ちなみにこの地図もキラウエア火口と書いてあります)
キラウエアカルデラの中にハレマウマウクレーターがあって、ここはカルデラより一段陥没した地形になっています。さらにハレマウマウクレーターの中にオーバールッククレーターというほぼ円形の穴があり、そこには溶岩湖があります(ありました)。この地図の赤丸が溶岩湖の部分です。
今回崩落が起きているのは、大雑把にはこの地図で緑色の線で示した範囲です。(正確にはUSGSの資料をご覧ください) つまり、ハレマウマウクレーターの内部で、オーバールッククレーターを含む範囲が陥没しています。なお、赤丸は元の地図に書かれたものものですが、実際の位置間もう少し南西です。緑の線は私が追記したものです。
ニュースでは単にキラウエアの火口が陥没と報じていて、あたかもカルデラの火口壁を含む広い範囲が崩落した、と思わせるような表現になっていることがあるので困ります。
なお、ハレマウマウクレーター内の溶岩湖の溶岩は、イーストリフトゾーンの割れ目の方に移動したようで、見えなくなったのですが、更にこの付近の地面が大きく陥没しているので、地底のマグマ溜りが小さくなった、ということではないかと思います。
◆今後の予想など
F8 からの溶岩の流出がいつまで続くかが一番のポイントだと思います。何しろ、50kmも離れたキラウエア山頂の地形の変化まで関係した、大規模な現象なので、鎮静までには長い期間がかかるような気がします。
溶岩流が現在の位置のまま変化しなければ、海に落ちて行くだけなので、被災地域はこれ以上拡大しないで済みそうです。それにアメリカの国土が拡大する訳で、嬉しいことなんでしょう。でも、溶岩流の先で固まった溶岩が増えれば、その方向には流れ難くなるはずなので、突然別の方向に流れ始めないとも限りません。これは怖い話だと思います。