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ルビジウムオシレーター (FE5680) の周波数をGPSで校正

GPSモジュール (GNSSモジュール) の u-blox M8Nを買ったので、これを使ってルビジウムオシレーターの周波数を測定し、さらに誤差の補正までやってみました。このルビジウムオシレーターの精度(確度)のチェックは2015年の2月にやったのが最後だったので、4年半ぶりの確認になります。

測定は単純で、GPSとルビジウムから出ている1秒パルス(1PPS)の位相差をユニバーサルカウンタで測定するだけです。以下、
順番に内容を見て行きます。

▼窓際にGPSモジュールを置く
GNSSレシーバーを窓際に設置
ここから同軸ケーブルで測定器が置いてある場所まで1PPS信号を送ります。

▼ルビジウムオシレーターとユニバーサルカウンター
ユニバーサルカウンタで位相差変化を測定
私の記事ではおなじみのルビジウムオシレーターとユニバーサルカウンター (アドバンテスト TR5822) です。

ユニバーサルカウンターをタイムインターバルモード (TI) に設定して、GPSとルビジウムの1PPSパルスのタイミングの差を測定します。アベレージング回数を10回にすると分解能10ns で時間差の測定が可能です。この写真は時間差が 405.27570ms であることを表示しています。

なお基準、つまり時間測定の開始信号はGPSにしています。あと、トリガ極性はプラスエッジに設定し、トリガは出来るだけ測定誤差が小さくなるような条件に設定します。

ともかく仕掛けはこれだけで簡単なのですが、高精度(高確度)の測定を行うためにはそれなりに時間がかかります。以下は、実際の測定結果です。

▼測定結果
補正前のルビジウム
これは約24時間の位相の変化グラフです。時々カウンタの値を紙に書き留める、という原始的な方法で記録しているので、測定間隔がばらばらになっています。実はこれを自動測定にしたいのですが、なかなかうまい手がありません。

グラフは右下がりになっているので、位相差は減っていく傾向です。ということはルビジウムの周波数が高いことになり、その量はグラフの傾きから判ります。

エクセルで求めた近似直線の傾きは -0.0015 となっているので、1日当たり0.0015ms、つまり1.5μsの変化となっています。この値から計算すると誤差は 1.5 e-6 / (3600 * 24) = 1.736 e-11 ということになります。以前(2015年2月)測定した時の誤差は1.4 eー11 だったので僅かに誤差は拡大しているようです。

まあこの程度ならどうでも良い範囲なのですが、せっかく値が判ったのでこれを補正してみることにします。このルビジウムオシレーターは外部からコマンドを送ることで、周波数の微調整が出来ます。最後にその調整を行ったのは2012年の6月なので、もう7年も前になります。

以下は調整の手順とその内容です。まずは書き込みのためのアダプタを引っ張り出してきます。

▼RS232C to USBインターフェイスアダプタ
RS232C to USB 変換アダプタ
ルビジウムのインターフェイスはRS232Cなのでその仕様に合ったアダプタを使います。なお、たぶんTTL(CMOS)レベルのアダプタでも強引に使えないことはありませんが、ともかくここはRS232C のアダプタを使いました。これ、ひょっとしたらもう使うことは無いかもです。

通信はバイナリーモードで行うので、それに対応した通信ソフトを用意します。私はRs232c を使っていますが今ならもっと新しいものがあると思います。

まずは確認のために現在の補正値を読み出してみます。コマンドは 2D 04 00 29 です。すると値は 762 (0x02FA)が帰ってきて以前設定した値と同じでした(当たり前ですが)、これで一安心です。

GPSとの比較測定結果から誤差は +1.736e-11 ですが、これを出力の 10Mhz に換算すると、173.6μHz 高いことになります。補正量の感度は 6.80789μHz/LSB なので、補正量は 173.6/6.80789 = 25 ということになります。つまり、周波数が高かったので 25 だけ補正量を減らせば良い、ということになります。絶対値で言うと、762 (0x02FA) だったのを 737 (0x02E1) に減らすことになります。

以下、実際に補正量の入力を行います。

▼補正量の入力(クリックで別窓に大きな図)
ルビジウムの周波数補正コマンド
2C 09 00 25 00 00 02 E1 E3 が設定コマンドです。
コマンドの意味は、最初の29が補正値書き込み命令、09 00 が全体のデーターサイズでリトルエンディアン表現のバイト数、25 がここまでのデーターのチェックサム、次の 00 00 02 E1 が 補正値でビッグエンディアン(負の値は2の補数表現)表現の値、最後のE3が補正値のチェックサムです。詳しくはFE5680のOption2のマニュアル参照ください。

▼ちゃんと設定されているか確認(クリックで別窓に大きな図)
確認
確認コマンド2D 04 00 29を送って、応答は2D 09 00 24 00 00 02 E1 E3 が返ってきました。オフセットは正しく 0x02E1 に設定されているのでうまくいったようです。

ここまでやったら確認のために再度測定します。この測定にも24時間かかります。

▼測定結果
ルビジウム補正後
傾きがほぼ水平になったので誤差の補正はうまくいっているようです。

えいやっと線を引くと、傾きはおよそ -0.2μs/Day なので、誤差は 0.2e-6 / (24 * 3600) = 2.31e-12 ということになります。つまりルビジウムオシレーターの精度(確度)を12桁まで追い込めたことになります。

◆まとめ
久しぶりにルビジウムオシレーターの校正をやってみました。以前同じことをやった時に使ったGPSモジュールと比べ、今回買った物は1PPS信号のジッタがものすごく小さくなっているので、短い時間で測定が出来て楽でした。技術の進歩をはっきりと感じることが出来て気持ち良いです。なお以前の記事のグラフと見比べるとその進歩を実感することが出来ると思います。

全く独立した系で作っている信号のタイミングが、24時間経っても 0.2μsしかズレないというのは恐るべき精度です。特に、このルビジウムオシレーターは数千円で買った物で、小さな箱なのに、電源を入れるだけでこんな精度(確度)の信号が得られる訳で、これは良い買い物でした。

この測定の最中に実はリアルタイムクロックのDS3231 の精度測定もやっていました。こっちは水晶なのでどんなに合わせ込んでもフラフラとズレて行くのですが、それはそれで興味深いデーターが取れています。近日中にご披露したいと思います。
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