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コンデンサ式スポット溶接機の開発、その顛末(前編)

◆まえがき
コンデンサ式スポット溶接機を作る話ですが、実は途中で開発は中止しました。そんなことで、締まりの無い話になってしまうのですが、顛末の記録ということで記事にまとめておきます。なお、一つの記事には収まらないので前編と後編に分けることになります。

◆参考資料
コンデンサ式スポット溶接機については、「Kuni/JA1UZGのもろもろ」さんが製作記事をいっぱい書かれていて大変参考になります。ありがとうございます。一連の記事は、コンデンサスポット溶接機のカテゴリにまとめていらっしゃるようです。
だったら、Kuni さんの記事の通りに作れば良さそうなものですが、細かい所で良く判らない点があるのと、対象を電池タブ用の厚さ0.1mmのニッケルリボンに絞るという条件で実験してみることにしました。

◆コンデンサ式溶接機の回路
コンデンサ式のスポット溶接機の基本回路は以下のようになります。
単純な駆動回路
右側のコンデンサに蓄えたエネルギーを FETで一気に放電させることで溶接を行います。スイッチをONにするとFETが導通し、コンデンサの電荷が一気に放電して大電流が流れることで溶接を行います。

・電流波形
電流波形
これは、前の記事の10mΩのシャント抵抗の両端電圧波形で、ピークで700A流れています。

原理の説明としてはこの回路で良いのですが、実際のスイッチにはチャッタがあるので、FETはON/OFFを繰り返すことになって、大きなストレスがかかります。つまり、いつも上の写真のような綺麗な波形にはならず、途中で何度も遮断された波形になります(なることがあります)。通電中に遮断されると、残留インダクタンスによって大きな電圧が発生します。また、ゲートが中途半端な電圧になると、FETが激しく発熱することになります。そんなことで、単純なスイッチを使うとFETに大きなストレスがかかる恐れがあります。

そんな問題を解決するために、以下のような回路を使うことにしました。

◆Arduinoを使った駆動回路(図をクリックで別窓に拡大表示)
溶接機制御回路
パワーFETのゲート駆動にトランジスタ (Q3, Q4) を使ったプッシュプルドライブ回路を使っています。これで高速なゲートドライブが可能になります。

Arduinoを使ってスイッチの状態検出と溶接パルスの発生を行っています。なんだか大げさで、ロジックICを使った方が良いかも知れません。でも、チャッタリング対策をやって、タイマーICの周辺回路の定数をあれこれ調整なんてやるなら、プログラムを書いた方が楽だと思います。それに、後で機能を追加するのも簡単になります。

なお、D8ピンへの配線は自動トリガのためにコンタクト検出用に設けたものですが、プログラムは未対応です。

プログラムは以下の通りです。
// コンデンサ式溶接機制御ソフト

#define TRIG_SW 8
#define FIREOUT 9

void setup() {
pinMode(TRIG_SW, INPUT_PULLUP);
pinMode(FIREOUT, OUTPUT);
}

void loop() {
while (digitalRead(TRIG_SW) == HIGH) { // トリガスイッチが押されるまで待つ
}
digitalWrite(FIREOUT, HIGH); // 溶接信号ON
delay(100); // 放電終了待ち 100ms
digitalWrite(FIREOUT, LOW); // 溶接信号OFF
while (digitalRead(TRIG_SW) == LOW) { // まだ押されていたら離されるまで待つ
}
delay(30);
}
スイッチが押されると100ms のトリガパルスを出すで課のプログラムです。

◆実際の回路
Arduinoで駆動パルス発生

溶接用コンデンサとFET
コンデンサは16V/2200μFを10個パラ、つまり合計 0.022Fです。大電流が流れるパスはΦ1.5mmの銅線で配線しています。
溶接電流を測定するためのシャント抵抗(10mΩ)を先端付近に入れています。パワーFETには前の記事で説明したIRLBL3032の偽物を5個パラ接続して使いました。

この状態で先端をショートさせた時の電流波形がこの記事の上から2番目の写真です。

◆テスト結果
回路が出来たので早速溶接を試みました。対象は、先に書いたように厚さ0.1mmのニッケルリボン2枚です。結果は表面に傷跡が付いたり、銅の電極がニッケルリボンにくっついたりするものの、残念ながらリボン同士が溶接されることはありませんでした。

それでも何とか溶接される条件は無いか、いろいろやっていたら、FETを2個壊してしまいました。orz

◆壊れたパワーFET
fake IRLB3034
中を見るために、モールドを剥がしてみました。(タブを下側に曲げました。)シリコンが上下に破断したので残念ながらダイの表面を見ることは出来ませんでした。

このダイサイズが大きいのか小さいのか判断する情報を持ちません。データーシートによると、IRLB3032のシリコン許容電流は343Aなので、このダイのサイズでその電流は厳しい気がします。まあ偽物チップなのでサイズが小さくても当然ではあります。

inside of fake IRLB3034
もう一つはソースのボンディングワイヤの状態を見るためにミニルーターでモールドを上から削ってみました。太めのアルミ線(たぶん角線)2本でボンディングされていました。もっと細いボンディングワイヤが使われているのではなかろうか、と疑っていたのですが、考えたらON抵抗10mΩのパワーFETなのでこれくらいのことはやっていて当然なのかも知れません。ちなみに、本物のIRLB3034なら ON抵抗は1.4mΩなので、ここにはぶっといリボンが使われるのでしょう。あと、こういう調査には発煙硝酸を使えばいいのですが、自宅でやるのは危なすぎます。

◆まとめ
ということで、溶接は残念ながら失敗しました。この程度(700A)の電流では0.1mm厚のニッケルリボンの溶接は出来ない、ということでした。

また、溶接出来なかったどころか、パワーFETが壊れて返り討ちに遭いました。まあこちらは中華な偽物のFETなので仕方ないでしょう。その腹いせという訳でもありませんが、FETは解体の刑に処しました。

次回はコンデンサの容量を増やしてテストします。また、10mΩのシャント抵抗が入っているとそれだけで電圧のロスになるので、ここはもっと抵抗の低い物に交換予定です。
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