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MT3608を使った昇圧モジュール、改造後の特性測定結果

◆まえがき
このところ連載しているMT3608を使った昇圧コンバーターモジュールの話の続きです。前回の記事で問題点を直すために改造が済んだので、今回は特性の測定を行います。

なお、先にネタバレですが、改造で完璧な物になっているかと思ったのですが、15V以上への昇圧はダメでした。

◆昇圧モジュール
・外観
測定したモジュールの状態
C2(出力コンデンサ)を出力端子に直付けし(+増量)、電解コンデンサを追加という改造を行った物を測定しました。

・裏面
モジュールの裏面、MT3608と印刷
使用しているICの型番を示すMT3608というマーキングがあります。

・コンバーターのIC
S358BatCかも
実装されているのはMT3608では無く、S35BatC (358atC かも)というマーキングの物でした。TO-23サイズの小さなパッケージなのに4Aのスイッチング能力があるのだから大したものです。

・測定の様子
測定の様子
強力な安定化電源に太い線で直結し、電子負荷を使って特性測定を行いました。

◆特性測定結果
1) 5Vへの昇圧特性
モジュールの出力電圧を5Vに設定し、入力電圧を2.5Vから4.5Vまで0.5Vステップで変えた時の特性です。

・5Vへの昇圧特性
5Vへ昇圧時の特性
負荷電流が増えると5Vを維持できなくなって、電圧が下がる様子が見えています。

入力電圧が上がると5Vで供給可能な電流が増えて行きます。入力電圧2.5Vでは出力電流は0.7A、入力電圧を4.5Vまで上げると、出力電流は2Aも供給可能です。

・効率
5V出力の効率

負荷電流0.2A程度までなら90%くらいの効率が出ていて優秀な性能です。

入力電圧が下がる、つまり昇圧比が大きくなると効率が下がるのは仕方がないでしょう。それでも、入力電圧3.5Vで出力1Aの時の効率は80%以上あるので、18650のリチウムイオン電池を5Vに昇圧するような使い方にぴったりの特性だと思います。というか、そういう用途を狙って設計した物なんでしょう。

2) 5Vから昇圧した場合
入力電圧を5Vにして昇圧する場合の特性を測定しました。

・昇圧特性(入力電圧=5V)
5Vから昇圧
出力電圧9Vでは1.1A,12Vでは0.7Aまでの出力が可能でした。しかし、18Vでは少し電流を流すと電圧が不安定になって(発振してしまって)測定不能でした。

グラフの右端はいきなり終わっていて、電圧の垂下特性が見えていません。これは、これ以上電流を増やすと間欠的に電圧が下がるようになって、正確な電圧が測定出来なかったためです。たぶんチップの電流リミッタが動作しているのだと思います。ただ、いきなり間欠的に電圧の急降下が始まるのではなく徐々に電圧が低下する、いわゆる垂下特性になっていた方がいろいろな点で安心な気がします。

・効率
5Vから昇圧する場合の効率
正常に動作している範囲の効率はなかなか優秀な値が出ていると思います。この調子で24Vまでちゃんと動いていてくれていたら申し分なかったのに、残念です。

◆NJM2360と比較
ちょうど良い機会なので昔の定番のコンバーターのNJM2360とサイズを比較してみます。この基板は1ケ月前に製作したものです

・MJN2360とMT3608を使ったモジュールのサイズ比較
NJM2360とMT3608の比較
上がMJM2360を使ったモジュールで、両者の出力容量はほぼ同じ(MT3608の方が30%くらい大きい)ですが、MT3608を使ったモジュールはかなり小さくなっています。まあ私の作り方がへぼい、という話はあります。

効率で見ても、NJM2360を使った場合は最高でも80%以下だったので、MT3608を使えばロスが半減することになります。パワーMOSトランジスタの威力ですね。

◆考察
測定結果を見ると、12Vまでの昇圧ならうまく行っていますが、それ以上の電圧になると制御が破綻してしまってダメ、ということになります。なお、入力電圧を上げて昇圧比を下げれば24Vを出力することが出来るのかも知れませんが、そういう条件付きの物は使い難いです。

ともかくMT3608のデーターシートを見る限り昇圧比の制限など無いので、今回のモジュールに搭載されているチップの特性に問題がありそうです。もう少し改造すれば直りそうな気もしますが、もう面倒臭くなってきたのでこのへんで諦めようかと思っています。

・MT3608の推奨の基板パターン
MT3608の推奨パターン
上の図はネットで見つけたMT3608の推奨の基板パターンです。レイアウトや配線など、あちこちが納得できる形になっています。この図に記入されたコメントによると、Cin(C1)の配線を最短化することが重要みたいです。
上図の掲載資料のURL→https://datasheetspdf.com/pdf-file/909246/AEROSEMI/MT3608/1


配線パターンの様子
一方で今回テストした基板のパターンは上の写真のようになっています。C2の配線が長いのは以前の記事で指摘しましたが、C1(Cin)やPin1(FETのドレイン)の接続も紫色の線で示すように細く長い線になっています。これではチップの性能を完全に引き出すのは難しいかも知れません。

◆ついでに、
うまく改造出来たと思っていたのですが、まだ中途半端な状態だったようです。記事の中にも書きましたが、搭載されているチップはMT3608の完全な互換品では無いのかも知れません。ちなみにこのモジュールはAliExpressでは定番の商品のようで、大量に販売されているので、全部が全部こんなにダメな特性とは考え難いです。

そうは言っても、今回私の所に届いた物は明らかにダメで、中華クオィティだったという話になっちゃいます。今はこういう品質ですが、何年か経てば、かつての日本のように良い品物を安く供給できるようになるんでしょうか。

◆おまけ
MT3608のデーターシートのグラフですごく気になった点があったので指摘しておきます。
ダメなグラフ
これは入力電圧に対する出力電圧のグラフで、エクセルの折れ線グラフで書いている感じです。しかしこういうグラフは散布図で書かないといけません。散布図で書いていないために横軸の目盛りの位置が判り難くなっています。更に大きな問題として、Vinが4.2Vのポイントは他のプロットとは間隔が違っているのにもかかわらず同じ間隔でプロットされちゃってます。こういう基本的なことが出来ていないのは格好悪いです。

【2021/6/29追記】
Pande43さんからのコメントによると、このモジュールに搭載されているICはPT6221という型番のようです。TO-23の部品ではデバイスの型番を別の文字列に置き換えてマーキングすることを忘れていました。話を整理すると、
MT3608のマーキングは B628DC (AEROSEMI社)
 https://datasheetspdf.com/pdf-file/909246/AEROSEMI/MT3608/1
PT6211のマーキングは S35BXXX (PUOLOP社) xxxはロットなどか
 http://www.puolop.com/uploads/pdf/20200513/8fdaa4e14cfbf836da594024e3a4f2ed.pdf

PT6211はスイッチのプロテクトが3Aで動作するのでMT3608より容量が少し小さいようです(MT3608は4A)。

他の違いとして最小動作電圧が異なっていて、MT3608は2Vなのに対し、PT6211は2.7Vでした。リチウムイオン電池で使う場合、2.7Vで昇圧停止した方が安全そうです。そう言えば、この記事の5Vへの昇圧テストで、入力電圧2Vでは動かなかったので変だなと思ったのですが、これで謎が解けました。というか、入力電圧2.5Vで動かしたデーターを記事に掲載していますが、これはPT6211のスペック外の状態でした。

これだけ仕様が違うと、モジュールの裏面に印刷されているMT3608という表示は偽物ということになって、返金を要求できるかもしれません(面倒なのでしませんが)。そうやると、「あれは、シリーズ名というか飾りというかみたいなもので、、」などととぼけられるんでしょうね。ともかく、中華なマーケットの闇を見ちゃった感じです。
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