Arduinoを使った歯車研削機を改良
◆まえがき
半月前に簡単な歯車研削機を作りましたが、スリットを入れる機能しか無いので最終的な歯車の形はヤスリを使って削り出す必要があります。やってみるとこの作業は結構大変で、特にたくさんある歯の歯幅を一定に揃えるのは手作業では無理な感じでした。
そんなことで砥石で2回カットすることで歯底の幅を自動的に切り出してしまうことにしました。
◆加工中の様子
歯の幅を正しいサイズで加工することが出来るようになりました。
歯車の寸法精度を上げるため、軸の先端をV溝で保持する方式に変更しています。
◆回路図
砥石の上限位置をVR1で設定出来るようにしました。
◆プログラム
20221018_GearCutter2.ino (BOM付きutf8)
動けば良いというレベルで作っているので、直したいところがいっぱいあるのですが、記録を兼ねてそのまま公開します。以下はプログラムのポイントです。
・#define NGT の値で歯数を指定
・#define CUT_WIDTH の値で2度切りする時の移動量を指定。この値(cp2)はモジュールと砥石の幅で変わってくるので、後記の表から拾ってくる。
・プログラムを起動すると加工待ち状態で待機し、この時に可変抵抗を廻すと砥石の位置を上下させます。ここで設定した位置が砥石の上限位置になります。
・加工スタートスイッチ(SW-1)をONにすると歯車加工を開始。OFFにすると加工中の歯の加工が終わった後で次の歯の位置に移動した後で待機。
・円周加工スイッチを押しながらリセットすると、ワークが連続回転するので外周加工を行います。
◆歯車仕様一覧表
モジュールと歯数に対する各部寸法の一覧表です。また、歯底を2度切りで加工するためのパラメーター(cp2)の値を示します。
◆加工例
・研削加工後
歯が少し傾いています。砥石の位置が悪い可能性が高いのですが、2度切りしている2回目の加工で砥石が逃げるような現象が発生しているのかも知れません。先に中央で切って後で前後をカット、つまり3度切りすれば改善するのかも知れません。
・刃先形状修正後
それっぽくなっています。なおこの例では歯の厚さが薄くなりすぎています。
◆関連ツールの整備
より精度の高い歯車の製作を目指して以下のようなツールを整備しました。
・軸穴加工ドリル
ハンドドリルでは正確な加工が難しかったので、実体顕微鏡にミニルーターを取り付けて穴開け出来るようにしました。この顕微鏡(SMZ-2B)の上下移動機構はクロスローラーガイドなので精度は抜群に良いはずです。
ボール盤があればこんなことしなくても良いんですが、まあ無いものはしょうがないです。
◆噛み合い確認
歯車として正常に使えるか確認するために準備しました。規定の軸間距離に設定してスムーズに廻るか確認します。モーターで回して歯面の当たりを出す狙いもあります。
◆ギアプラー
軸に圧入した歯車を抜くためのプラーを適当にでっち上げ。
・完成品、素材など
テスト加工で作った歯車などです。歯型を修正していない物もありますが、この状態でストックしておいて実際に必要になった時に追加工するつもりです。軸穴だけ開けたものもあります。
軸穴をΦ1.9mmのドリルで開け、M2の長ネジをマンドレル代わりに使って歯車を加工。最終的には、Φ2mmのシャフトならそのまま圧入し、それ以外のサイズの場合は穴を拡大して使うつもりです。
◆改良が必要な点
モーターを使って歯の噛み合わせを確認すると、高速回転させた時に歯の衝突が発生しているようです。慣らし運転や潤滑で改善出来るのかも知れません。噛み合わせのガタが大きいのもその原因になっている気もします。ともかく、現時点ではモーターピニオンのような高速回転する場所に使える歯車は出来ていません。なお、モーターピニオンのモジュールは0.5mmでおもちゃ病院の標準在庫にあるので、とりあえずは困らないと思います。
◆まとめ
必要なサイズの歯車を切り出すための最低限の仕掛けが出来ました。おもちゃ修理の実戦で使いながら改良していきたいと思います。
こういうメカ物は結果がすぐに判って楽しいのですが、精度を出そうとすると改善が必要な箇所が一気に増えてしまって処置が大変でした。プログラムや回路をいじっていたのは総作業時間の5%くらいで、後はメカの改良とテスト加工に費やすことになりました。慣れないことをやると時間ばかりかかってしまいます。