デジタルアンプ PAM8403 のポップ音対策回路の検討
◆まえがき
テレビにサブウーハーを付けたくて、デジタルアンプのAM8304を使ったアンプの回路の検討を行ったのですが、電源のON/OFF時にポップ音が出るという問題が残っています。ということで、対策方法を検討しました。
なお、残念ながら完全な対策まで出来ていないのですが、記録を兼ねて現在の状態を記事にしておきます。
◆対策の考え方
ネットには先人の方々の事例がいろいろ公開されているので、それらを参考にしながら対策方法を検討しました。やり方としては、
1)MUTEピンを使って対策
PAM8304には消音のためのMUTEピンがありますが、この機能を使うことでポップ音対策するのが普通のようです。
シャットダウンピン(SHDN)でも音は出なくなりますが、操作時に大きなポップ音が発生するので対策には使えません。このピンはMUTE状態にした後で使うものなんでしょう。
2) MUTEピンの操作回路
調べて見ると以下のような方法が使われていました。なお、MUTEピンをLowにすると消音状態になります。
a. 入力電圧をコンデンサでディレイさせてMUTEピンに入力。
b. npnトランジスタを使いエミッタフォロアでMUTEピンに入力。
例:PAM8403でプアオーディオ(ポップノイズの対策をする) Poor and Junk さん
c. ハイサイドにpnpトランジスタ置いてMUTEピンに入力。
例:小出力デジタルアンプ(PAM8403)の音が意外に良かったので③ hiroshiさん
上記のうちで c. の方法が一番確実そうなので、これを参考にさせていただくことにしました。
◆回路の検討
前記の hiroshi さんのページで公開されている回路図を少し書き直したのが下図です。
オリジナルではトランジスタが2SC1015と記載されていますが、回路図から判断すると2SA1015が正しいと思うので修正しています。
MUTEピンをR2でLowに引っ張って消音状態にしておき、音を出したい時にトランジスタでHighに引っ張るという考え方です。電源をONにするとC1が充電され、ベース電位が+5Vに対してLED1のVf - 0.6V まで下がったらトランジスタがONしてMUTEを上に引っ張るという動作になります。
面白いのはエミッタにLEDが入っていることです。LEDのVfの分だけMUTEの電圧が下がるので、音が出るギリギリの電圧にしておくことでOFF時のポップ音を防ごうという考え方だそうです。
SBDはOFFにした時にC1の電荷を素早く抜くために入っているのだと思います。
この回路をテストすると、ONの時のポップ音は出ませんが、OFFの時のポップ音が出ないようにLEDを交換して調整するのがちょっと面倒でした。具体的には青色LED(Vf2.2V程度)がベストで、白色LED(Vf2.5V)だとミュートされっぱなしでした。これで動作としてはOKなのですが、バラツキなどを考えると無調整で動く回路にしておきたいところです。
◆回路案
電源OFF時にも確実にポップ音が出ないようにするため、以下のような回路を考えてみました。
対策のポイントはアンプの電源をSBD2を通して供給することです。これで電源がOFFになった時にQ1のポップ音防止回路が切り離されるのですぐにMUTE状態になります。なお、SBD2を入れることでアンプの電源電圧が0.3V下がってしまいますが、パワーには余裕があるので目をつむることにしました。R3はUSBコネクタを引き抜いた場合にC1の電荷を抜くためのものです。
◆効果
この回路で電源ONの時のポップ音は出ません。
一方でOFFの時は電源の切り方によって状況は変わってきます。スイッチで電源を切断、あるいはUSBコネクタを引っこ抜いたような場合はポップ音は出ません。これで完成したかと思ったのですが、電源の1次側(AC側)をOFFにした場合はポップ音が出てしまいました。電源電圧がゆっくり下がることでSBD2で回路を分離した効果が無くなってしまうのだと思います。
仕方ないので、C2に3300μFと言う大きな値のコンデンサを入れることで対策しました。これでもOFF時に僅かにポップ音が出てしまうのですが、簡単な対策はこれくらいしか思い付きませんでした。
◆外観
・MUTEピンの引き出し
Pin4と5の間のパターンをカットし、Pin5(MUTE)を引き出します。
・ブレッドボード
記事に書くとごちゃごちゃしてますが、実際の回路は簡単です。
◆まとめ
完全ではないですが、これでポップ音対策回路が出来ました。サブウーハーアンプの回路と組み合わせてプリント基板に組み、ケースに入れて仕上げたいと思います。
アンプのポップ音対策と言っても電源スイッチがどこにあるかでその対策が変わってきます。今回最初は、電源の+5Vをスイッチで直接ON/OFFする状態を想定して検討したのですが、よく考えたらAC電源側のスイッチを操作する場合も考えておかないといけなかったことに後になって気付きました。まあ要件定義の確認不足ってことですね。
今回の回路ですが、電源電圧が4V以上に上がったら一定時間待ってMUTE解除。4V以下に下がったら即時にミュート。と言う仕様で作った方が良かったかも知れません。これをロジック回路で作るのは面倒だから、小さなマイコンでやった方が簡単かも知れませんが、面倒ですね。リセットICを使えば良いのかな?
- 関連記事
-
- テレビ用サブウーハーアンプの製作、完成編
- デジタルアンプ PAM8403 のポップ音をリセットICで対策
- デジタルアンプ PAM8403 のポップ音対策回路の検討
- テレビにサブウーハーを追加、回路検討編
- 12AX7とNutubeを、低い電圧で動かした場合の特性を比較してみた