アンパンマンのクレーンゲーム(おもちゃ修理)
◆まえがき
おもちゃ修理の話の2回目、今回はアンパンマンのクレーンゲームです。
◆外観
動かないということで持ち込まれたものです。電源を入れると効果音は出ますが動きません、ただモーターが回っている音はするのでメカニカルな問題のようです。
クレーンゲームは構造が複雑で、ギアボックスまで分解して元に戻すのに30分以上はかかります。またメカに問題があった場合の修理はかなり厄介なことになりがちです。そんなことで、おもちゃ病院の開催中は電池切れ程度をチェックし、あまり深追いしないで持ち帰って修理することにしています。
ちなみに以前の修理の事例:2018年8月16日、2018年3月4日、
◆修理
分解してみると、クレーンを前後方向に動かすギヤに問題がありました。ラックに乗ったピニオンで前後に動かす仕掛けになっていますが、
・右側のピニオンが無い!
シャフトだけ残っていてピニオンがありません。たぶん脱落して下の景品と混ざって捨てられちゃったのだと思います。
・左側のピニオンが割れてる!
反対側の歯車は残っていましたが、割れています。これではトルクが伝わらないのでクレーンは動きません。ピニオン割れは細いステンレス線で縛って修理出来ることが多いのですが、この形状では縛る場所が無いのでそういう修理は難しそうです。
電源投入時にクレーンのキャリッジをホームポジションに戻す動作があるのですが、キャリッジが動かないので初期化動作が完了せずモーターが回り続ける状態になっていました。
・分解
クレーンゲームのレールは中央付近で間隔を広げることでこの写真のようにバラバラに分解できます。
◆修理
故障原因が判れば修理は簡単ですが、歯車は外径:Φ7.5, 歯数:9枚、軸径:Φ2.5とおもちゃの歯車としては珍しいサイズなので交換部品がありません。仕方が無いのでアルミの丸棒を削って作ることにしました。
・歯車のブランク
Φ7.5のアルミの丸棒を輪切りにして素材として使います。
割れてはいますが元の歯車があるので、現物合わせで同じ物を作れば良いので多少は楽です。
軸穴を精度良く開けるため、ワークを電動ドリルのチャックに咥え、万力に固定したドリルを使って穴開けしました。
歯の加工は金ノコと組みヤスリを使用し、最後は実体顕微鏡で見ながら形状を調整しました。
・歯車完成
ちょっと怪しげな所はありますが、ラックの上を転がして大きな引っ掛かり無く動くのでこれで良しとしました。
穴はΦ2.5のドリルで開けておき、軸はΦ2.5でローレット加工されているのでそのまま叩き込んで取り付けました。なお2枚の歯車は位相を合わせて取り付ける必要があります。
・完成
新しい歯車を取り付けた状態です。金属ピニオンによる樹脂ラックへのアタックを出来るだけ減らすため、シリコングリスを塗っておきました。
◆まとめ
歯車を作ったのは初めてでしたがうまく出来て良かったです。
こういうケースのためにパルスモーターを組み合わせた簡単なホブ盤を作っておくのも良さそうです。適当なXYテーブルを見掛けたら手に入れておくと良さそうです。というかまずはボール盤が欲しいですが置く場所が無いです。
◆動いている様子
クレーンゲームの修理完了して試運転中。
— ラジオペンチ (@radiopench1) July 26, 2022
クレーンを前後に動かすピニオンが2個あって、1つは割れ、もう一つは脱落して行方不明。変な寸法の歯車で手持ちが無かったので、アルミ棒を削って作った。ハンドツールだけで歯車作るのは大変#おもちゃ病院 pic.twitter.com/9GR8N5wtLI
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