google-site-verification: google3bd66dd162ef54c7.html
fc2ブログ

誘導電流で1円玉を飛ばす

◆まえがき
先月にコイルガンを作りましたが、その記事の最後にちょっと触れた誘導電流を使って金属を飛ばすことをやってみました。なお、途中経過はツイッターに書いているのでこの記事はそのまとめを兼ねています。

◆原理
以前のコイルガンでは磁界による吸引力を利用しましたが、今回は誘導電流による反発力を利用します。吸引力を使う場合は、弾の飽和磁束密度を超える磁界を加えても力は増えなくなります。つまり1段の加速能力には限界があることになります。

一方で誘導電流を使う方式ではそのような制限は無いので、パワーを上げればいくらでも加速することが可能になるはずです。但し、誘導電流を効率的に流すためには電気抵抗の低い物質で弾を作る必要があります。

誘導電流による反発力は、磁界の変化に伴い発生する渦電流による反発力と考えるのが一般的だと思います。

別の考え方として、ベタの金属板の上に置いた導体の電流が変化すれば、金属板の表面に対して対称な位置に置いた仮想導体に逆向きの電流が流れ、両者の磁界の反発量により斥力が発生すると考えても良いと思います。高速回路のリターン電流が頭にある人にはこちらの考え方の方が判り易いかも知れません。

◆コイル
コイル
一円玉を飛ばすことを考えているのでサイズはそれに見合った直径で作りました。コイルの線はΦ1.0mmのポリウレタン線を渦巻状に11回巻いています。

コイルの直流抵抗は使用する電源の内部抵抗と同じ程度にした方が効率が良くなるので(最大電力の定理)、数十mΩ程度にしています。なお、実測では13mΩ/1.27μHでした。

以下順に実験の過程を振り返ってみます。

◆実験-1、タブ溶接機で駆動
磁気の吸引力を使ったコイルガンを作った時と同じ電源です。やってみると動画のようにちょっとしか飛びませんでした。電流の最大値は300A程度だと思いますが、これでは足らないようです。溶接機のスイッチング速度がさほど速くないのも影響しているかも知れません。

◆実験-2、コンデンサ220μF
コンデンサに充電し、220μF/190Vで放電させましたが、これでもたいして飛びません。配線を指でつまんで接続しているのですが、大きな音と火花が出ておっかないです。

◆実験-3、コンデンサ容量940μF
コンデンサを470μFx2個に増やして再挑戦。
全景
銅線を曲げて簡単なスイッチを作ったので少し安全になりました。スイッチはプラスチックの棒を使って操作します。

・回路図
回路図
高電圧はファンクションジェネレーター(max10Vpp/50Ω)の出力をトランスで昇圧して作りました。ファンクションジェネレーターなので出力振幅を簡単に調整出来ます。

・テスト結果
動画では発射時、天井に当たった時、床に落下した時の音が3回聞こえます。

一円玉は天井に届くようになりました。まだまだパワー不足ですがとりあえず最初に目標としていたレベルに達しました。

ちなみにコンデンサのESRは2個並列の状態で50mΩでした。実験-2のコンデンサのESRは150mΩだったのでこちらの実験の方が大電流を流しやすくなっているはずです。

電圧と打ち上げ高さ
充電電圧に対する一円玉の打ち上げ高さです。高さは目測で測っているので誤差は大きいです。

電圧を上げると急激に到達高さが上がっています。エクセルの近似曲線は x^4.98 などという急上昇カーブになっています。2乗だったら0.5*CV^2なので当然なのですが、5乗に近いこの感度の高さはどういうロジックなんでしょうね。自重以上の力を与えない飛び上がらないので、その閾値エネルギーが30V付近にあるのは間違いないと思います。

・電流測定
放電回路の途中に自作の10mΩのシャント抵抗を入れ、電流波形を見てみました。
電流波形測定用のシャント抵抗

・電流波形
電流波形
1V=100Aなのでピークで1750A流れています。

この波形の立ち上がりの部分で斥力が発生して一円玉を打ち上げる力になるのだと思います。立下りの部分でも磁界の変化があるので斥力が発生しそうですが、変化速度が遅いので大した力は発生しないでしょう。

立ち上がり時間は約20μsなのでdi/dtは87.5A/μs。1500Aが100μsの期間流れていると仮定すると、I2Sの値は225になります。これらの値はサイリスタでスイッチする時の素子の選定に使えるはずです。

◆実験-3
一円玉以外のコインではどうなるかやってみました。
飛んだ高さの順は、導体抵抗の低い10円玉が一番、抵抗は少し高いけど軽い5円玉が二番、50円と100円玉は抵抗値が高いのでほとんど飛ばないという結果でした。なお、一番飛んだ10円玉でも30cmくらいで一円玉にははるかに及びません。ちなみに、50円と100円玉はニッケル合金だと思いますが磁石に付かないので非磁性です。

この実験には、軽くて電気抵抗の低い一円玉が一番適しているということです。

◆まとめ
以上、ツイッターで呟いてきたことに解説を織り交ぜて整理しました。一円玉を飛ばして面白がっているだけで、誘導型のコイルガンとしては原型にすらなっていないのですが、この記事が何かの参考になれば幸いです。

この実験は学園祭などの出し物に使うと面白いと思います。電気磁気学を習った人なら一目で原理が判るはずなので、興味を持ってもらえると思います。薄いプラ板でコイルを隠せば不思議な手品の出来上がりですね。
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

面白い!

”飛ぶ”だとか”ファイアー”だとか、はたまた”爆ぜる^^;)”だとかのエフェクトある実験は楽しいですよね。
是非、”超電磁砲(レールガン)”にも挑戦して下さい!!。
(⇑これって、低速発射は出来なんでしょうか?)

re:面白い!

レールガンって気中放電を維持できるパワーを入れないとまともに動きそうにないので難しそうですよね。
何かうまい抜け道がないか考えておくことにします。

No title

Hi.Thanks for sharing your grate knowledge.Can you help me with your spectrum analyzer.I have problem with pico sketch.After uploading sketch by arduino ide 1.8.19 spectrum analyzer should show 20kHz frequency from generator but show about 17kHz?Can you help how to correct showing frequency?How can contact with you?

To spectrum analyzer

I'm sorry, for various reasons, I do not reply by e-mail.

No title

こんにちは。面白くて実戦的で、、仕事も忘れてワクワクしながら、読みふけっております。


飛び上がる高さですが、4乗ではないでしょうか?
少ないデータ数と誤差の関係で、5乗に近い値に見えている気がします。

まず、磁石同士の反発(~力積)は、コイルとアルミ板の両方の磁化に比例するので、記事の通り、CV^2ですが、さらに、それによって与えられるアルミ板の初期運動量(~初速)が、力積に比例します。
飛び上がる高さは、簡単な力学で、初期速度の自乗に比例することが分かりますので、自乗と自乗で4乗と言うわけです。いかがでしょうか。


>>エクセルの近似曲線は x^4.98 などという急上昇カーブになっています。2乗だったら0.5*CV^2なので当然なのですが、5乗に近いこの感度の高さはど

magcupさん、今晩は

アドバイスありがとうございます。
おっしゃっている数式は理解出来ますが、考え方のロジックがよく理解できないので考えてみますね。

No title

レスありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

ご参考まで。
コイルとアルミ板の間の力=F ∝ μ^2 ∝ V^2
で、力積=F・Δt=Δp=運動量の変化
さらに、(Δp)^2/2m=mgh=位置エネルギー
ですから、h∝(Δp)^2∝(V^2)^2
カレンダー
05 | 2023/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

ラジオペンチ

Author:ラジオペンチ
電子工作を中心としたブログです。たまに近所(東京都稲城市)の話題など。60過ぎて視力や器用さの衰えを感じつつ日々挑戦!
コメントを入れる時にメールアドレスの記入は不要です。なお、非公開コメントは受け付けていません。
記事の内容のご利用は読者の自己責任でお願いします。

記事が気に入ったらクリックを!
最新記事
カテゴリ
最新コメント
リンク
FC2カウンター
検索フォーム
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード