コイルガン用のLED曳光弾の製作
◆まえがき
12月に電池タブ溶接機を使ったコイルガンの実験を行いましたが、その仕掛けを使って光る弾、つまり曳光弾を作ってみました。
※ コイルガン関係の記事が増えたので、ブログにコイルガンのカテゴリを作りました。
◆原理
本物の曳光弾は火薬を使うようですが、そんなことするといろいろ厄介な問題が起こります。ということ、熱も煙も出ないLEDでやることにしました。LEDをどうやって光らせるかが問題ですが、コイルガンを発射する時に発生する強力な磁界を利用することにしました。
・回路図
L1 が鉄製の弾丸の周囲に巻いたコイルで、発射時の磁界を電流に変換します。当然ですが、弾丸の発射コイルとL1の極性は合わせておきます。(極性が違っていても弱く発光します)
発生した電流は逆流防止ダイード(D1)を経由してC1に充電します。発射された後はR1とC1の時定数で定まる減衰カーブでD2のLEDを点灯させる仕掛けです。
この回路図では時定数は0.112秒になっています(11.2uF x 10kΩ = 112ms)。この時定数の3倍の0.3秒後の光量は初期の明るさの25%程度まで減衰しますが、これくらいだったら許容範囲だと思います。ちなみに、私のコイルガンの弾速は15m/sくらいしか出ないので、0.3秒後の弾の位置は4.5m前方になります。室内で遊ぶなら、これくらいの発光時間があれば充分だと思います。
◆製作
・コイル巻き
鉄の弾丸(Φ5mm)の外側に保護用のポリイミドテープを巻き、その上に外径Φ0.12mm(芯線径はたぶんΦ0.1)のポリウレタン線を約50回巻きました。なお巻き始めの線はポリイミドテープの下を通して巻き終わり側に引き出しています。
手巻きは大変なので写真のように電動ドリルを使って巻きました。そのままではコイルが巻き戻ってしまうので、木工用ボンドを水で薄めたものを塗っておき、少しべたつく状態で巻いていきました。なおコイルの線が重なると直径が大きくなってバレルに通らなくなるので平巻き(一層巻き)にしています。
・接続基板
配線のベースとして使うため、両面スルホールのユニバーサル基板を写真のように切り出した物を用意しました。2枚で弾丸一つ分です。
・配線
回路の前後にプリント基板を置いて部品をはんだ付けしました。この写真ではD1,C1,D2はチップ部品。R1だけリード部品を使っています。本来ならR1にもチップ抵抗を使いたかったのですが手持ちが無かったのでこうしています。なおC1には2.8uFのチップセラコンを3段積みで使っています。
この2個は3mmの砲弾型のLEDを付けてみました。(C1がセラコンを4段積みになっています)
部品を立体的に取り付けないといけないのではんだ付けの作業はかなり大変でした。この構造でいっぱい作るなら、前後の基板の位置を固定する治具を用意した方が良いです。
回路と弾体部は両面テープで仮止めしています。
・完成
保護用に透明な収縮チューブを被せて完成です。
外径はΦ5.9mmで、何とかΦ6mmのバレルを通すことが出来る物が出来ました。上から、赤(Red)、白(White)、緑(Green)の3色を作ってみました。
◆Twitter
コイルガン用のLED曳光弾が出来た。
— ラジオペンチ (@radiopench1) February 4, 2023
タブ溶接機を使った非力なガンなので弾道がしょぼいのはご勘弁を、
詳細は後日ブログで解説予定です。 pic.twitter.com/8YOahP4gGQ
動画で弾の軌跡が途切れていますが、これはたぶん1/30秒(1/60秒?)の動画のフレームが見えているのだと思います。この現象を利用すると弾速の測定が出来そうです。
◆まとめ
何とか曳光弾らしきものが出来ました。弾丸が光の筋を引いて飛ぶのは綺麗です。
この実験ではコイルガンの電源に電池のタブ溶接機を使っています。一般的なコイルガンはコンデンサを高電圧に充電した電源が使われますが、その場合はコイルの巻き数などを変更する必要があるかも知れません。
全部チップ部品にしてプリント基板で配線すればもっとコンパクトな物が作れると思います。さらに例えば 1/1000秒周期で発光するような物が出来れば、光の軌跡が点線に見えるので面白そうです。
◆動画
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