写るんですの昇圧トランスの特性(過渡編)
定常編の正弦波の特性に続いて、昇圧特性の確認です。
タイトルは、前の記事の時に勢いで過渡編としてしまいましたが、あまり過渡現象の話は出てこなくて、以前作ったGM管用の高圧電源の特性ばっかりです。
といっても、基本的な話として、
◆昇圧回路の周波数をどうするか?
写るんですのオリジナルの回路ではブロッキングオシレータで27kHzくらいの周波数で発振しています。普通に考えるとこの周波数が一番効率が良さそうに思えます。
しかしこの周波数では、発振を維持するためのロスが大きいため、GM管駆動のような軽い負荷では効率がバカみたいに悪くなります。例えて言えば、自転車で運べる程度の荷物をダンプカーで運んでいるような状態です。
ということで、試作したGM管用の電源では発振周波数を1kHzに下げた状態で使っています。
▼測定回路

これはフライバック・コンバーター回路(リンギング チョーク コンバータ、RCCとも呼ばれているようです)です。入力電圧3V、Q1のベースには555で発生させた1kHzのパルスを印加。出力電圧を約1/100にしてマルチメータで測定しています。
パルス幅を振って、出力電圧と、入力電流、効率を測定した結果が以下のグラフです。
▼フライバックモードでの特性 (クリックで大きなグラフ表示)

パルス幅が8μSまでは順調に動作していますが、これ以上になると急激に特性が悪化しています。どうも二次側の共振とドライブが喧嘩してしまうようです。
▼ドライブパルス(上)とトランスの出力電圧波形(下)

左がパルス幅8μS、右がパルス幅12μSです。
トランスの一次と二次が逆極性になっているので、最初はトランスの出力電圧はマイナスに振れ、トランジスタがOFFになった瞬間にプラス側に電圧が急上昇しています。これがトランスに蓄えられた磁束が急減する際に発生するフライバック電圧です。
フライバックで電圧が上昇した後、クランプ気味に電圧が上昇している部分がD1がONになってコンデンサ(C2)に充電している期間です。その後の振動はピーク電圧が下がってしまうので出力には無関係で、ムダに振動しているだけになります。共振周波数の27kHzで使うとこのムダがずっと続くことになって、どえらいエネルギーを消費することになるのだと思います。
パルス幅が広い右の波形では、フライバックさせる前に二次側の共振で電流の逆転が起こっているようです。
このあたりは、宇都宮先生の記事で判り易い解説があるので、そちらを見た方がいいと思います。
ところで、フライバック方式では一次側の電流ONの期間は二次側には電流が流れず、磁気回路にエネルギーが蓄えられることになっています。しかし、写るんですのトランスでは二次側の浮遊容量が大きいので最初から二次側に電流が流れていて、何だかそのオツリを頂戴しているようにも思えます。
それなら、オツリでは無く、本体を捉えた方がいいような気がしてトランスの極性を逆にして特性を測ってみました。
▼測定回路

トランスの一次側が入れ替わっているだけです。これは何ていう名前なんでしょう? とりあえず同相方式と呼ぶことにします。
▼同相方式での特性 (クリックで大きなグラフ表示)

フライバック方式より出力電圧がやや下がり、効率も少し悪化してしまいました。
同相成分だけ拾うのは得策ではないようです。どうも逆相側でオツリといっしょにフライバックで磁束に貯まったエネルギーも利用した方が正解のようです。
また、パルス幅に対する出力電圧の特性を見ると直線性も悪化しています。これはフィードバック制御する時に、ちょっとだけ不利になります。
ちなみに、パルス幅を大きくすると急に効率が悪化する現象も同じです。波形写真はこんな感じ。

左がパルス幅8μS、右が12μSで効率が悪化している状態です。波形がギザっとなっている部分で大きなロスが発生しているのだと思います。
▼まとめ
過渡編というタイトルなのに、限定した状態の動作報告にしかなっていなくてすみません。
▼おまけ
二次側の高電圧の測定には、部品箱にあった100MΩの抵抗を使いました。これ、すごく便利です。

写真では判りにくいですが、碍管の周りの抵抗膜をスパイラルに切って高抵抗にしているので、周波数特性はものすごく悪そうです。この抵抗、部品箱にまだ何本かあるのですが、何のためにいつ頃買ったんだろうか?
【10月15日追記】
波形がギザっとなて損失が急増する原因は、磁気回路の飽和が原因だったようです。詳しくは、こちらの記事に記載しました。
タイトルは、前の記事の時に勢いで過渡編としてしまいましたが、あまり過渡現象の話は出てこなくて、以前作ったGM管用の高圧電源の特性ばっかりです。
といっても、基本的な話として、
◆昇圧回路の周波数をどうするか?
写るんですのオリジナルの回路ではブロッキングオシレータで27kHzくらいの周波数で発振しています。普通に考えるとこの周波数が一番効率が良さそうに思えます。
しかしこの周波数では、発振を維持するためのロスが大きいため、GM管駆動のような軽い負荷では効率がバカみたいに悪くなります。例えて言えば、自転車で運べる程度の荷物をダンプカーで運んでいるような状態です。
ということで、試作したGM管用の電源では発振周波数を1kHzに下げた状態で使っています。
▼測定回路

これはフライバック・コンバーター回路(リンギング チョーク コンバータ、RCCとも呼ばれているようです)です。入力電圧3V、Q1のベースには555で発生させた1kHzのパルスを印加。出力電圧を約1/100にしてマルチメータで測定しています。
パルス幅を振って、出力電圧と、入力電流、効率を測定した結果が以下のグラフです。
▼フライバックモードでの特性 (クリックで大きなグラフ表示)

パルス幅が8μSまでは順調に動作していますが、これ以上になると急激に特性が悪化しています。どうも二次側の共振とドライブが喧嘩してしまうようです。
▼ドライブパルス(上)とトランスの出力電圧波形(下)


左がパルス幅8μS、右がパルス幅12μSです。
トランスの一次と二次が逆極性になっているので、最初はトランスの出力電圧はマイナスに振れ、トランジスタがOFFになった瞬間にプラス側に電圧が急上昇しています。これがトランスに蓄えられた磁束が急減する際に発生するフライバック電圧です。
フライバックで電圧が上昇した後、クランプ気味に電圧が上昇している部分がD1がONになってコンデンサ(C2)に充電している期間です。その後の振動はピーク電圧が下がってしまうので出力には無関係で、ムダに振動しているだけになります。共振周波数の27kHzで使うとこのムダがずっと続くことになって、どえらいエネルギーを消費することになるのだと思います。
パルス幅が広い右の波形では、フライバックさせる前に二次側の共振で電流の逆転が起こっているようです。
このあたりは、宇都宮先生の記事で判り易い解説があるので、そちらを見た方がいいと思います。
ところで、フライバック方式では一次側の電流ONの期間は二次側には電流が流れず、磁気回路にエネルギーが蓄えられることになっています。しかし、写るんですのトランスでは二次側の浮遊容量が大きいので最初から二次側に電流が流れていて、何だかそのオツリを頂戴しているようにも思えます。
それなら、オツリでは無く、本体を捉えた方がいいような気がしてトランスの極性を逆にして特性を測ってみました。
▼測定回路

トランスの一次側が入れ替わっているだけです。これは何ていう名前なんでしょう? とりあえず同相方式と呼ぶことにします。
▼同相方式での特性 (クリックで大きなグラフ表示)

フライバック方式より出力電圧がやや下がり、効率も少し悪化してしまいました。
同相成分だけ拾うのは得策ではないようです。どうも逆相側でオツリといっしょにフライバックで磁束に貯まったエネルギーも利用した方が正解のようです。
また、パルス幅に対する出力電圧の特性を見ると直線性も悪化しています。これはフィードバック制御する時に、ちょっとだけ不利になります。
ちなみに、パルス幅を大きくすると急に効率が悪化する現象も同じです。波形写真はこんな感じ。


左がパルス幅8μS、右が12μSで効率が悪化している状態です。波形がギザっとなっている部分で大きなロスが発生しているのだと思います。
▼まとめ
過渡編というタイトルなのに、限定した状態の動作報告にしかなっていなくてすみません。
▼おまけ
二次側の高電圧の測定には、部品箱にあった100MΩの抵抗を使いました。これ、すごく便利です。

写真では判りにくいですが、碍管の周りの抵抗膜をスパイラルに切って高抵抗にしているので、周波数特性はものすごく悪そうです。この抵抗、部品箱にまだ何本かあるのですが、何のためにいつ頃買ったんだろうか?
【10月15日追記】
波形がギザっとなて損失が急増する原因は、磁気回路の飽和が原因だったようです。詳しくは、こちらの記事に記載しました。
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