Pch MOSFETによるハイサイド電源スイッチと逆接防止回路
一つ前の記事の回路で、でPch MOS FETを電源スイッチとして使いました。ここで思い出したのは、同じく Pch MOS FETを使った電源の逆接続防止回路です。私の記事ではこちらに使用例。詳しい解説は、エアーバリアブルさんのこの記事参照。
この二つはすごく似た回路で、違いはFETに流す電流の向きだけです。ということで間違い易いので、この機会に情報を整理しておくことにします。なお、説明を判り易くするために、ボディダイオード付きのFETの回路記号を作りました。
▼Pch MOS FETを使った電源スイッチ、逆接続防止回路

左(図1)が電源スイッチ回路です。SWを接続(ONにする)するとINからOUT側が導通します。SWの両端をOUT側の回路からオープンコレクタなどで閉じれば、SWから手を放しても電源をONにし続けることが出来ます。このSWには小さな電流しか流れないので、許容電流の小さなタクトスイッチでも大きな電流のON/OFFが出来ます。
右(図2)は逆接続防止回路回路です。IN側に逆の電圧を加えた場合、OUT側へ電流が流れないので逆接保護が出来ます。同じことはダイオードを入れれば出来ますが、ダイオードの順方向の電圧降下の分だけOUT側の電圧が下がってしまいます。その点この回路はMOSFETのON抵抗だけで導通するのでロスが少なくなります。
なお、図に記入するのを忘れましたが、電源の電圧はプラスで使うことを想定しています。このようにGND側をコモンにしてプラス側(マイナス側も?)を操作することを、例えばハイサイドスイッチと言います。
せっかくなのでLTspiceでシミュレーションしてみました。
▼シミュレーション結果(クリックで別窓に拡大)

2種類の回路でスイッチがON/OFFの場合、つまりモデルを4つ作り、入力電圧を-5~+5Vまで変化させた時の出力電圧の変化をシュミレートしました。
なお、使ったFETは2SJ334に近そうな特性と思えるSi7465DPで、Vds: -60V, On抵抗:64mΩ, Vton:2.4V です。(実は2SJ334のデバイスモデルは持っているのですが、いまいち計算結果が怪しかったので、LTspiceのライブラリに最初から入っていた部品を使いました)
以下順番に結果を見ていきます。
▼電源スイッチモード

上の図がスイッチOFF,下がスイッチがONの状態。右のグラフの斜めの水色の直線は入力電圧です。
まずは入力電圧がプラスの領域(グラフの右側)を見ていきます。
右上のグラフの赤い線がOFFの状態で、入力電圧がプラスの時は出力電圧はゼロのまま、つまり確かにOFFの状態になっています。 スイッチがONの状態、(下の図)では入力電圧が2.5V以上で出力電圧が立ち上がり、ONの状態になっています。ここで注意が必要なのは、ゲートしきい値電圧以下ではスイッチがON状態にならないことです。ここは出来るだけゲートしきい値電圧が低い物を使った方がいいでしょう。
なお、入力電圧がマイナスの領域ではスッチの状態にかかわらずボディダイオードを通して導通しています。つまりスイッチをOFFの状態にしていても逆電圧は印加されてしまいます。このあたりはメカニカルなスイッチとは挙動が違うので注意が必要です。
▼逆接保護回路

上の回路図は逆接保護回路ではありませんが、参考にシミュレートしたものです。この場合は、正側はダイオードの順電圧だけ、マイナス側はゲートしきい値電圧分だけ出力電圧がシフトしています。
下が本題の逆接保護回路です。逆接した場合、つまりマイナス電圧を加えた場合の出力電圧はゼロのままになっていて、うまく保護機能が働いています。また、プラス電圧の領域では、まずはボディダイオードが導通し、電圧がゲートしきい値電圧の2.5V以上になると、ボディダイオードとパラに接続されているFETの本体がONになってロスの少ない導通状態になっています。
ひとつ上の図の電源スイッチモードのように、入力電圧が2.5V以上になるまで出力が全く出ないようなことは無いので、パワーを伝達する回路としては、こちらの方が優れていると思います。但しOFFには出来ませんが、
◆まとめ
実は電源スイッチモードの回路でも逆接保護機能があればいいのにな、という下心で調べてみたのですが、そううまくはいきませんでした。
あと、電池一本で動かす物のように電源電圧が低い場合、この記事に書いたような仕掛けを使うのは難しそうな気がします。Pch MOSFETでゲートしきい値電圧がうんと低くて、それなりのパワーも扱えて安いのが無いか、調べてみようと思います。
この二つはすごく似た回路で、違いはFETに流す電流の向きだけです。ということで間違い易いので、この機会に情報を整理しておくことにします。なお、説明を判り易くするために、ボディダイオード付きのFETの回路記号を作りました。
▼Pch MOS FETを使った電源スイッチ、逆接続防止回路

左(図1)が電源スイッチ回路です。SWを接続(ONにする)するとINからOUT側が導通します。SWの両端をOUT側の回路からオープンコレクタなどで閉じれば、SWから手を放しても電源をONにし続けることが出来ます。このSWには小さな電流しか流れないので、許容電流の小さなタクトスイッチでも大きな電流のON/OFFが出来ます。
右(図2)は逆接続防止回路回路です。IN側に逆の電圧を加えた場合、OUT側へ電流が流れないので逆接保護が出来ます。同じことはダイオードを入れれば出来ますが、ダイオードの順方向の電圧降下の分だけOUT側の電圧が下がってしまいます。その点この回路はMOSFETのON抵抗だけで導通するのでロスが少なくなります。
なお、図に記入するのを忘れましたが、電源の電圧はプラスで使うことを想定しています。このようにGND側をコモンにしてプラス側(マイナス側も?)を操作することを、例えばハイサイドスイッチと言います。
せっかくなのでLTspiceでシミュレーションしてみました。
▼シミュレーション結果(クリックで別窓に拡大)

2種類の回路でスイッチがON/OFFの場合、つまりモデルを4つ作り、入力電圧を-5~+5Vまで変化させた時の出力電圧の変化をシュミレートしました。
なお、使ったFETは2SJ334に近そうな特性と思えるSi7465DPで、Vds: -60V, On抵抗:64mΩ, Vton:2.4V です。(実は2SJ334のデバイスモデルは持っているのですが、いまいち計算結果が怪しかったので、LTspiceのライブラリに最初から入っていた部品を使いました)
以下順番に結果を見ていきます。
▼電源スイッチモード

上の図がスイッチOFF,下がスイッチがONの状態。右のグラフの斜めの水色の直線は入力電圧です。
まずは入力電圧がプラスの領域(グラフの右側)を見ていきます。
右上のグラフの赤い線がOFFの状態で、入力電圧がプラスの時は出力電圧はゼロのまま、つまり確かにOFFの状態になっています。 スイッチがONの状態、(下の図)では入力電圧が2.5V以上で出力電圧が立ち上がり、ONの状態になっています。ここで注意が必要なのは、ゲートしきい値電圧以下ではスイッチがON状態にならないことです。ここは出来るだけゲートしきい値電圧が低い物を使った方がいいでしょう。
なお、入力電圧がマイナスの領域ではスッチの状態にかかわらずボディダイオードを通して導通しています。つまりスイッチをOFFの状態にしていても逆電圧は印加されてしまいます。このあたりはメカニカルなスイッチとは挙動が違うので注意が必要です。
▼逆接保護回路

上の回路図は逆接保護回路ではありませんが、参考にシミュレートしたものです。この場合は、正側はダイオードの順電圧だけ、マイナス側はゲートしきい値電圧分だけ出力電圧がシフトしています。
下が本題の逆接保護回路です。逆接した場合、つまりマイナス電圧を加えた場合の出力電圧はゼロのままになっていて、うまく保護機能が働いています。また、プラス電圧の領域では、まずはボディダイオードが導通し、電圧がゲートしきい値電圧の2.5V以上になると、ボディダイオードとパラに接続されているFETの本体がONになってロスの少ない導通状態になっています。
ひとつ上の図の電源スイッチモードのように、入力電圧が2.5V以上になるまで出力が全く出ないようなことは無いので、パワーを伝達する回路としては、こちらの方が優れていると思います。但しOFFには出来ませんが、
◆まとめ
実は電源スイッチモードの回路でも逆接保護機能があればいいのにな、という下心で調べてみたのですが、そううまくはいきませんでした。
あと、電池一本で動かす物のように電源電圧が低い場合、この記事に書いたような仕掛けを使うのは難しそうな気がします。Pch MOSFETでゲートしきい値電圧がうんと低くて、それなりのパワーも扱えて安いのが無いか、調べてみようと思います。
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