ダイソーの300円モバイルバッテリー(特性測定)
ダイソーの300円モバイルバッテリー(2017春モデル)の話の最終回。今回は実際に動いている状態の波形などを見て行きます。先人の方々の調査で出力がパルス状に落ちるという話がとても気になるので、そのあたりを重点的に見て行きたいと思います。前回の記事はこちら。
なお、参考にさせて頂いたのは下記のサイトです。ありがとうございました。
・3代目・ダイソー300円モバイルバッテリーがデンジャラス仕様に こばさんの wakwak 山歩き
・ダイソーのモバイルバッテリーを分解! 進め!GK隊!!さん
出力が時々落ちるという話はすごく気になるのですが、その前にモバイルバッテリーの基本性能である充放電能力について調べておきます。
▼充電特性
外部から充電する時に流れる電流の最大値は0.77Aでした。充電が完了に近づくとともにこの電流は小さくなりました。データーシートで充電電流は0.8Aとなっているのは最大電流のことだと思われます。
高負荷で連続放電させた直後に充電すると、充電電流が0.5A程度に抑えられる現象がありました。チップの温度を監視して電流を抑える機能が働いたのかも知れません。
▼放電特性(出力特性)
出力電圧5Vを維持できる最大電流は0.8Aでした。これもデーターシート通りです。これ以上電流が多くなると電圧が下がりますが、1A流すと出力電圧は約4.2Vまで低下しました。
ここからが注目の出力電圧の変化の様子です。
▼測定用負荷

ごく軽い負荷をかけた場合の挙動を調べるために、10kΩの可変抵抗 + 50Ωの抵抗を負荷として用意しました。(50Ωは可変抵抗の保護用に入れたもので、実際には100//100Ωです)。これで負荷電流を 0.5mAから100mAまで変えることが出来ます。
このモバイルバッテリーが無負荷の状態では、出力(入力)端子には電池の電圧が出ていました。たぶん高抵抗を介して電圧が出ているのだと思います。この電圧の変化を検出して内部回路を起動させているのでしょう。
負荷電流をわずかに流すと、DCDCコンバーターが起動して出力電圧が5Vまで上昇して出力モードに入るようです。但し、負荷電流が60mA以下の領域では数秒置きに出力が遮断されましたが、これが先人の方が記事にされていた現象だと思います。その様子は以下の通りです。
▼出力遮断の様子(負荷電流 1mA)

これは負荷電流が約1mAの場合です。0.5秒間も出力が遮断されています。画面左の黄色の矢印がGNDレベルで、縦軸は1V/Divです。勝手にこんなに長い時間(と言っても0.5秒ですが)電源が落ちると困ります。約10秒間隔でこの現象が繰り返されます。
▼出力遮断の様子(負荷電流 46mA)

負荷電流46mAの場合の出力波形です。遮断時間は約30msになっています。負荷電流が増えると遮断時間が短くなるようです。
ともかく、こういう電源の遮断があると、マイコンなどではパワーオンリセットが掛かって、うまく動かない可能性があります。電源に大容量のパスコンを入れておく手がありますが、こういうおかしな挙動の電源のためにそこまでしてやる必要は無いでしょう。
▼出力波形(負荷電流 = 82mA)

82mAでは出力の遮断現象は出なくなりました。データーシートに「自动关机负载电流 (Iauto_off) 60mA 」という項目があるので、60mA以上流せば電源の遮断は発生しなくなるのだと思います。
但し、出力の遮断現象は発生しなくなりますが、この写真の波形のように、出力電圧に小さなディップが発生します。ディップの時間は約4ms、周期は約2秒、ディップ時の電圧は約4.7Vでした。これくらいの電圧ディップは普通はあまり問題にはならないと思いますが、オーディオアンプなどのアナログ回路ではノイズの発生原因になるかも知れません。
この電圧ディップは相手から逆に充電されていないか検出するために行っているそうです。電圧を変化させて電流の変化を測定、つまりダイナミックインピーダンス測定のようなことをやっているのではないかと思います。一つのコネクタで充放電を兼用するためには、いろいろな仕掛けが必要になるということですね。
▼DCDCコンバーターの波形

負荷電流を約100mA流した時のDCDCコンバーターの波形です(コイルの出力側波形)。パルス周波数は約900kHzでPWM制御になっています。なお軽い負荷の領域ではバーストパルス駆動に変わって変換ロスを減らしていました。
◆ここで一旦まとめます
負荷電流が少ない(60mA以下)場合、出力電圧が周期的にゼロになるので注意が必要です。
これより大きな電流を流した場合でも、5Vの出力電圧が2秒周期で短時間(約4ms) 4.7Vまで下がるので注意が必要です。
このように、このモバイルバッテリーの出力は一定電圧では無いので、そのあたりを注意して使わないといけません。とは言っても一般の人はスマホなどの充電用として使うだけでしょうから、まず問題が起こることは無いと思います。一番問題が起きそうなのは、電子工作好きの人が手軽な5V電源として使う場合です。こういう現象があることを知らないで使うと、思わぬ動作不良が発生して、原因の特定に苦労するかも知れません。
あと、照明用のLEDを接続した時に、一瞬光ってすぐに消灯することがありました。バッテリーは半分くらい残っていたので容量不足ではありません。たぶん起動を失敗していたのだと思いますが、どういう条件で起動失敗するかは判りません。負荷と並列の静電容量の値やVI特性の関係で、失敗し易い条件があるのかも知れません。
◆以下は番外編です
▼二個並列にしてみた

両者の間をコネクタを接続しました。両方が電源として立ち上がって喧嘩が始まるかと思ったのですが、何も起こりませんでした。
▼両方出力モードで運転

両者を並列に接続した状態で、残りのコネクタにUSB挿入タイプのLEDライト(写真に写っている物)を挿して強制的に起動させると、両方のモバイルバッテリーが出力モードになりました。つまり両者が助け合ってLEDを光らせていました。
LEDが光っている状態では明るすぎて写真が撮れないので、LEDを抜いたのが上の写真です。無負荷なのですが、両方のモバイルバッテリーのLEDが青く光ったままで、両方が出力モードになっています。これ、お互いを負荷と思っているのでしょうか?
▼片方が充電モード

片方がフル充電、片方が半充電の状態で同じことをやってみました。すると、フル充電のモバイルバッテリーが半充電の方を充電し始めました。つまり、元気な方が弱っている者を助けていることになり、なかなか美しい光景です。ちなみにこの写真の赤色LEDが点灯している方が充電されているモバイルバッテリーです。
なお、参考にさせて頂いたのは下記のサイトです。ありがとうございました。
・3代目・ダイソー300円モバイルバッテリーがデンジャラス仕様に こばさんの wakwak 山歩き
・ダイソーのモバイルバッテリーを分解! 進め!GK隊!!さん
出力が時々落ちるという話はすごく気になるのですが、その前にモバイルバッテリーの基本性能である充放電能力について調べておきます。
▼充電特性
外部から充電する時に流れる電流の最大値は0.77Aでした。充電が完了に近づくとともにこの電流は小さくなりました。データーシートで充電電流は0.8Aとなっているのは最大電流のことだと思われます。
高負荷で連続放電させた直後に充電すると、充電電流が0.5A程度に抑えられる現象がありました。チップの温度を監視して電流を抑える機能が働いたのかも知れません。
▼放電特性(出力特性)
出力電圧5Vを維持できる最大電流は0.8Aでした。これもデーターシート通りです。これ以上電流が多くなると電圧が下がりますが、1A流すと出力電圧は約4.2Vまで低下しました。
ここからが注目の出力電圧の変化の様子です。
▼測定用負荷

ごく軽い負荷をかけた場合の挙動を調べるために、10kΩの可変抵抗 + 50Ωの抵抗を負荷として用意しました。(50Ωは可変抵抗の保護用に入れたもので、実際には100//100Ωです)。これで負荷電流を 0.5mAから100mAまで変えることが出来ます。
このモバイルバッテリーが無負荷の状態では、出力(入力)端子には電池の電圧が出ていました。たぶん高抵抗を介して電圧が出ているのだと思います。この電圧の変化を検出して内部回路を起動させているのでしょう。
負荷電流をわずかに流すと、DCDCコンバーターが起動して出力電圧が5Vまで上昇して出力モードに入るようです。但し、負荷電流が60mA以下の領域では数秒置きに出力が遮断されましたが、これが先人の方が記事にされていた現象だと思います。その様子は以下の通りです。
▼出力遮断の様子(負荷電流 1mA)

これは負荷電流が約1mAの場合です。0.5秒間も出力が遮断されています。画面左の黄色の矢印がGNDレベルで、縦軸は1V/Divです。勝手にこんなに長い時間(と言っても0.5秒ですが)電源が落ちると困ります。約10秒間隔でこの現象が繰り返されます。
▼出力遮断の様子(負荷電流 46mA)

負荷電流46mAの場合の出力波形です。遮断時間は約30msになっています。負荷電流が増えると遮断時間が短くなるようです。
ともかく、こういう電源の遮断があると、マイコンなどではパワーオンリセットが掛かって、うまく動かない可能性があります。電源に大容量のパスコンを入れておく手がありますが、こういうおかしな挙動の電源のためにそこまでしてやる必要は無いでしょう。
▼出力波形(負荷電流 = 82mA)

82mAでは出力の遮断現象は出なくなりました。データーシートに「自动关机负载电流 (Iauto_off) 60mA 」という項目があるので、60mA以上流せば電源の遮断は発生しなくなるのだと思います。
但し、出力の遮断現象は発生しなくなりますが、この写真の波形のように、出力電圧に小さなディップが発生します。ディップの時間は約4ms、周期は約2秒、ディップ時の電圧は約4.7Vでした。これくらいの電圧ディップは普通はあまり問題にはならないと思いますが、オーディオアンプなどのアナログ回路ではノイズの発生原因になるかも知れません。
この電圧ディップは相手から逆に充電されていないか検出するために行っているそうです。電圧を変化させて電流の変化を測定、つまりダイナミックインピーダンス測定のようなことをやっているのではないかと思います。一つのコネクタで充放電を兼用するためには、いろいろな仕掛けが必要になるということですね。
▼DCDCコンバーターの波形

負荷電流を約100mA流した時のDCDCコンバーターの波形です(コイルの出力側波形)。パルス周波数は約900kHzでPWM制御になっています。なお軽い負荷の領域ではバーストパルス駆動に変わって変換ロスを減らしていました。
◆ここで一旦まとめます
負荷電流が少ない(60mA以下)場合、出力電圧が周期的にゼロになるので注意が必要です。
これより大きな電流を流した場合でも、5Vの出力電圧が2秒周期で短時間(約4ms) 4.7Vまで下がるので注意が必要です。
このように、このモバイルバッテリーの出力は一定電圧では無いので、そのあたりを注意して使わないといけません。とは言っても一般の人はスマホなどの充電用として使うだけでしょうから、まず問題が起こることは無いと思います。一番問題が起きそうなのは、電子工作好きの人が手軽な5V電源として使う場合です。こういう現象があることを知らないで使うと、思わぬ動作不良が発生して、原因の特定に苦労するかも知れません。
あと、照明用のLEDを接続した時に、一瞬光ってすぐに消灯することがありました。バッテリーは半分くらい残っていたので容量不足ではありません。たぶん起動を失敗していたのだと思いますが、どういう条件で起動失敗するかは判りません。負荷と並列の静電容量の値やVI特性の関係で、失敗し易い条件があるのかも知れません。
◆以下は番外編です
▼二個並列にしてみた

両者の間をコネクタを接続しました。両方が電源として立ち上がって喧嘩が始まるかと思ったのですが、何も起こりませんでした。
▼両方出力モードで運転

両者を並列に接続した状態で、残りのコネクタにUSB挿入タイプのLEDライト(写真に写っている物)を挿して強制的に起動させると、両方のモバイルバッテリーが出力モードになりました。つまり両者が助け合ってLEDを光らせていました。
LEDが光っている状態では明るすぎて写真が撮れないので、LEDを抜いたのが上の写真です。無負荷なのですが、両方のモバイルバッテリーのLEDが青く光ったままで、両方が出力モードになっています。これ、お互いを負荷と思っているのでしょうか?
▼片方が充電モード

片方がフル充電、片方が半充電の状態で同じことをやってみました。すると、フル充電のモバイルバッテリーが半充電の方を充電し始めました。つまり、元気な方が弱っている者を助けていることになり、なかなか美しい光景です。ちなみにこの写真の赤色LEDが点灯している方が充電されているモバイルバッテリーです。
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