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ファービー(おもちゃ修理)

 12月に開催された稲城市のおもちゃ病院で、私が担当した修理の中で他のドクターさんの参考になりそうな事例を紹介します。2件ありますが、この記事ではファービーの修理を紹介します。

▼ファービー
ファービー
 我が家では買ったことが無いので、現物を触るのは初めてです。症状としては全く動かないということです。

 ファービーは修理の事例がネットに沢山上がっています。ただ皆さん手慣れていらっしゃるようで、いきなり修理の核心部分の話が始まることが多いです。でも、そこにたどり着くには、毛皮を脱がして分解しないといけないのですが、そのあたりの情報が少ないと感じました。

 そんなことで、分解していく過程を最初から記事にして行きます。

▼毛皮を脱がせた状態
ファービーの毛皮
 毛皮の裾にタイラップが通してあり、本体のプラスチックの溝に締め付けることで固定してありました。タイラップのラッチに小さなマイナスの時計用ドライバーを差し込めばロックを解除出来ます。
 組み立てる時は、ラジオペンチでタイラップの先を掴んでラッチに押し込めばOKです。無理ならタコ糸などで締め上げれば良いでしょう。

 ここまで分解する前段階として、顔の部品の止めビスを外す必要があります。

▼顔の止めネジ
毛皮の止めネジ
 毛皮と顔のプラ部品は縫い合わされて一体になっています。その顔のプラ部品は両側で本体にネジ止めされています。

▼毛皮を外した後の本体上部
服を外した本体上部(接着跡)
 耳を動かすナイロン製のアクチェーター周囲のボディーと、毛皮はホットボンドで接着されています。これを剥がさないと毛皮が外れません。組み立てる時は、毛皮をかぶせた後で、最後にホットボンドで数点接着してやれば良いと思います。

 なお、このアクチェーターと耳は糸で止められていますが、分解するためにはこの糸を切らないといけません。つまり、元に戻すには、針と糸が必要になります。

 以上が毛皮を脱がす手順です。

 以下、いよいよ修理に入って行きます。

▼モーター
前から見た様子
 ファービーの故障で多いのはモーターの整流子の接触不良だそうです。この故障はモーターを手で回してやると接触不良が修復されて自力回転するようになるということだそうです。
 中のケースを開けると、この写真のようにモーターの回転子が少し見えるので、そこを何かで動かしてやると、モーターが回転を始めました。

 運が良ければこれだけで修理完了になるらしいのですが、この個体はまだ様子が変でした。リセットをかけるとモーターが廻り続けて一向に止まる気配がありません。ということで調査と修理は続きます。

▼モーターの回転センサー(フォトトラ)
回転センサーと舌スイッチ
 モーターの回転は穴開きの歯車を使って光学的に検出しているようです。その信号はこの写真のフォトトラの端子をオシロで見ることで確認出来ますが、どうも異常は無さそうです。ちなみにかなりの高速のパルスが出てましたが、すみません周波数を測るのを忘れました。

 モーターが廻らないと大電流が流れて回路を痛めてしまいそうですが、回転センサーでモータを監視しているので、異常を検出して自動的にモーターをOFFにしていたのだと思います。

 モーターに異常は無さそうな感じなので、各部のスイッチのクリーニングを行いました

▼背面側
後部
 複雑なカムの後ろに、原点スイッチと背中スイッチがあるので、細かいサンドペーパーで接点を磨いてやりました。前面にある、お腹スイッチも同じように接点をサンドペーパーで磨いてやります。

 原点スイッチには調整ネジが付いており、ゆるみ止めのロックペイントが掛かっていました。たぶんこの調整が一番クリティカルかつ重要ということなんだと思います。この接点が接触不良になると動きがめちゃめちゃになるはずです。あと、モーターの動きをを監視するパルスセンサーは付いていますが、これだけでは正確なメカの位置までは判らないので、とにかく原点スイッチは重要です。

 ここまでやるとだいぶロボットらしい動きになってきました。でも寝た状態からなかなか覚醒しません。こういう時は傾斜センサー(スイッチ)の動きが悪いそうです。

▼傾斜スイッチ
傾斜スイッチ

▼傾斜スイッチの波形例
傾斜スイッチの反応
 ファービーを何度も揺すると酸化膜が破壊されて傾斜スイッチの接触不良が直ってくるらしいのですが、いくらやってもあまり改善していく感じがしませんでした。波形を見てもごく短時間しかONになっていません。そこで思い切って傾斜スイッチを取り外して分解清掃することにしました。

▼分解した傾斜スイッチ
傾斜スイッチ分解清掃
 左が一番下で、右に向かって積み上がっています。傾斜に応じて金属球が動くことで端子間がショートして姿勢の変化を検出する仕掛けです。電極端子を左から A, B, C と呼ぶと、水平の場合は端子間のショートは無しです。センサーが(30度くらい?)傾くと金属球が移動して端子の A と B がショートします。上下逆になると B と C がショートする仕掛けだと思います。

 見た目では特に異常は無かったのですが、部品をエタノールで洗い、最後はキムワイプで拭きあげて仕上げました。拭きあげ後は指の油などが付かないようにピンセットで触ります。

▼傾斜スイッチのテスト
傾斜スイッチ動作確認中
 オシロで動作状態の確認中です。しっかりとONになるようになったのでこれで良しとしました。

 これで全ての動作がOKとなったので、組み立てて修理完了しました。

◆まとめ
 結局は、モーターの整流子まで含んで金属接点はほとんで全部ダメになっていました。唯一大丈夫だったのは、舌の動き検出のマイクロスイッチだけです。ひょっとしたら、ファービーのボディの中に有機ガスなどが閉じ込められ、それが接点に堆積するような現象が起こっているのかも知れません。

 あと、こういう電子回路のスイッチには微小電流しか流れないので、長期間経つとスイッチが接触不良になり易いのですが、そういうことまで考慮した設計にしておいて欲しかったです。

 動作テストの電源に直流安定化電源を使うと、正常に動かない場合がありました。ファービーはモーターを素早く正転/逆転させているので、短時間ですが電源に電流が逆流することがあるようです。つまり電車の回生運転状態です。こうなると直流安定化電源は電流をシンクできないのでモーターを減速出来ず、動きがおかしくなることがあるようです。安定化電源の電圧計も瞬間的に7.5V程度の高い値を示していました。安定化電源を使う場合は外部にパラに抵抗を入れてバラスト電流を流す、あるいはおとなしく電池を使った方が良いでしょう。

◆ファービーが2体
ファービー2体
 修理に当たっては、院長先生から正常に動くファービーを貸していただきました(左側です)。これと動きを比較することでスムーズに修理を進めることが出来ました。これ(彼)がいなかったら修理はもっと難航していたと思います。来てくれてありがとう、助かりました。
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